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惨敗の日本男子バレー変革に挑む。
名コーチ・ブランの覚悟と指導法。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAyumi Yamamoto
posted2017/12/28 08:00
現役、指導者として世界トップでの戦いを体感しているブランコーチ。彼の招聘によって日本は復権を目指す。
グラチャンの最終合宿前に父が亡くなっても……。
グラチャンバレー前の最終合宿、ブランの合流は当初の予定より遅れた。その理由を全員の前で明かす姿に、胸が震えた、と主将の深津英臣は明かす。
「『遅れて申し訳ない、実は父が亡くなりました』と。でも『僕は今、ここにすべてを懸けているから』と言ってくれて。ブランさんの気持ち、彼がそこまで懸けてくれていることをすごく強く感じて、大会前にもう一度、チームが1つになりました」
だからこそ、グラチャンで1勝もできなかったこと。ブランの覚悟に応えられなかったことが情けない、と深津は言う。
「ブランさんは日本らしいバレーを追求させてくれました。でも僕たちはその大事な、ブランさんが言い続けた細かいプレーがここでできなかった。それが一番悔しいです」
成果と、大きな課題。瞬く間に過ぎた1年目のシーズンを終え、またすぐに、次のシーズンがやってくる。
「日本人にどんな方法が合っているのか、私も、もっと勉強しなければなりません。なぜなら違いはある中でも、彼らは私を受け入れようとしてくれているからです。これからさらに時間をかけて、お互いが意見を言い合い、納得して同じ方向へ進んでいけるように。これは、私にとっても大きな喜びであり、新しい挑戦です」
遠い異国で、覚悟を胸に――。
4度目の、特別なオリンピックへ向かって歩み続ける。
(Number936号『フィリップ・ブラン「日本男子バレーの変革に挑む」より)