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個人勝負の攻撃なら武藤嘉紀だ!
マインツでの孤軍奮闘を代表でも。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byGetty Images
posted2017/11/23 09:00
今季ブンデスではすでに3得点。現時点での武藤のゴール数は大迫、浅野ら他のブンデス日本人勢よりも多い。
日本と同じ悩みを抱えるマインツでの、武藤の意地。
実は所属するマインツも、ハリルジャパンと同じような悩みを抱えている。攻撃時に冷静なプレーができていないのだ。
日本の場合、最前線の大迫勇也が数少ないポストプレーで才能の片鱗を覗かせたが、ブラジル戦とベルギー戦ともに孤立することが多かった。マインツも同様に速攻主体の中で、選手たちが的確なプレー判断をできず、慌ててミスが増えることで、効果的に相手ゴール前まで迫ることができていない。つまり武藤がマインツで直面する光景は、大迫のそれと酷似している。
それでも限りある攻め手しかない中、武藤の意地を見た瞬間があった。
代表期間明けの11月18日に行われた、マインツvs.ケルン。武藤はFWとして先発し、大迫との日本人対決に臨んだ。
鋭いターンと強い当たりが、決勝点を呼んだ。
前半終了間際のプレーだった。
中盤から前方にアバウトなロングパスが蹴られる。右サイド奥に流れていったバウンドボールに向けて、相手DFソーレンセンと武藤が走った。190cm級の大型DFに対して、後方からスピードを生かし武藤が迫る。ソーレンセンがマイボールにしようと先にボールに触れたが、武藤は速さと対人プレーの強さで魅せた。
すかさず鋭い腰の回転と強い当たりでボールを奪い返し、さらにキレのあるターンで相手を置き去りにする。そこからドリブルでゴール中央に入っていこうとした瞬間、サポートに入った味方がボールをさらう。この流れからペナルティエリア内で倒されPKを獲得。結局、これが決勝点になった。
決して派手で華麗な攻撃ではない。言ってしまえば、泥臭いプレーだ。ただ、屈強なDFを相手にしても速さと強さ、キレ味、まさに個で太刀打ちする武藤を目の当たりにした。
繰り返しになるが、現状のハリルジャパンの攻撃には、組織だったカウンターやコンビプレーはあまりない。だからこそ武藤の強引な打開力は、打ってつけなのではないか。そんな見立てを、武藤自身がケルン戦で証明したのだ。