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“ガンバらしい攻撃”は消えたのか。
長谷川健太体制、5年間の栄光と影。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/10/27 10:30
ボールを持って崩すか、奪って即座にゴールを目指すか。形は違えど、長谷川体制でも攻撃の迫力は感じさせるものだった。
井手口、今野、倉田がハリル体制で活躍する素地が。
守備意識の徹底と同時に、指揮官が常にこだわり続けて来たのは「切り替えの速さ」と「球際の強さ」。縦に速いサッカーを求めるヴァイッド・ハリルホジッチ監督が率いる日本代表にも数々の選手を送り出し、ワールドカップのアジア最終予選で井手口陽介や倉田秋、今野泰幸らがピッチに立ったのは、日々の指導の副産物でもある。
「僕を代表にまで押し上げてくれた監督なのでもっと長く一緒にやりたかった」と倉田が言えば、井手口も「今のプレースタイルは健太さんが言い続けてくれたからこそ、出来た」と感謝を口にする。
数々の栄冠と新たな代表選手たち――。長谷川体制の確かな結果だ。
「ガンバらしい崩し」は今のスタイルではない。
しかし、全ての時代には、その光と影がある。
ハードワーカーと堅守に支えられた一昨年までの勝負強いサッカーは、ややもするとリアクションで力を発揮するサッカーだった。
現実主義者に率いられた大阪の雄は、クラブが本来、目指し続けて来た攻撃サッカーをいつしか失ってしまっていた。
近年、ガンバ大阪のテレビ中継で「ガンバらしい崩し」「ガンバならではのパスワーク」などと口にする解説者は、その戦いぶりをほぼ見ていないことを公にしているようなものである。
西野元監督が率いた当時は、遠藤や二川孝広(現東京ヴェルディ)を軸にパスサッカーを志向したガンバ大阪だが、長谷川監督が作り上げたのは個々のハードワークに基づく「ランサッカー」である。
8月5日にアウェイでヴァンフォーレ甲府に0-1で敗れた後、東口順昭が口にしていた言葉は実に興味深く、そして端的にチームの今のスタイルを説明してくれるものだった。
「勝ったセレッソ戦みたいに、今のガンバはボールを回してというよりも、やっぱり走ってエンジンがかかるチームだと思う。攻守においてアグレッシブに、(井手口)陽介や今ちゃん(今野)が前に出て行ったり、(倉田)秋が攻撃でも守備でもハードワークしたりすることで、エンジンがかかってくる」