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“ガンバらしい攻撃”は消えたのか。
長谷川健太体制、5年間の栄光と影。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/10/27 10:30
ボールを持って崩すか、奪って即座にゴールを目指すか。形は違えど、長谷川体制でも攻撃の迫力は感じさせるものだった。
指揮官が一貫して要求した「ファストブレイク」。
もっとも、指揮官が目指したのは単なる守備的なサッカーではない。就任から一貫して要求して来たのは「ファストブレイク(速攻)」である。
退任が決まった直後、自身がガンバ大阪にもたらした新たなエッセンスを問われた長谷川監督は「切り替えの部分は凄く速くなった。奪ってから速く攻める、という速攻がかつてのガンバにはなかったので、そういうのは増えたと思う」と胸を張ってみせた。
就任1年目のJ2リーグ優勝を皮切りに、昇格後に得た優勝は4回で、準優勝は3回。一度は降格の憂き目を見たガンバ大阪を、再び常勝軍団として復権させたのは、最大の功績と言っていいだろう。
日頃のミニゲームから勝ちにこだわれ、という思想。
西の常勝軍団として復権を果たすことになった2014年11月のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)決勝では、サンフレッチェ広島に一時は2点を先行される苦しい展開ながら「1年に何回かは打ち合う試合があってもいい」と公言した通り、3-2とナビスコカップ決勝の歴史で初めて2点のビハインドをひっくり返す逆転優勝を果たした。
「日頃のミニゲームからあそこまで『勝ちにこだわれ』と言う監督は初めて」と丹羽大輝(現広島)が驚いた勝利への執着心を植え付けられた選手たちは、苦しい時間帯で「ファストブレイク」を発動させるタフさを身につけていた。
同じく11月の32節・浦和レッズ戦では引き分けでも逆転優勝の望みがほぼ絶たれる崖っぷちに立たされていたが、後半43分に自陣からのロングカウンターで浦和レッズの隙に付け込み、佐藤晃大(現徳島ヴォルティス)が先制点をゲット。そしてアディショナルタイムには倉田秋がとどめのシュートを突き刺した。技巧派が繰り出す長短のカウンターの破壊力は、間違いなく長谷川ガンバの真骨頂だった。