マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
安田尚憲こそこのドラフトの盲点だ。
清宮よりも基本に忠実なことが宝。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/10/24 11:30
「清宮世代」と括られるが、安田尚憲はそれを覆すだけのポテンシャルを秘めている。本当の勝負は、ここからだ。
近くまで見て、スイングスピードで勝負。
ただ一見教科書通りの安田尚憲のバッティングにも、オリジナリティはある。
ボールを捉えるポイントの近さだ。清宮も近い。安田はそこまでじゃない。それでも、多くのアマチュア打者に比べるとかなり近い。“安田ポイント”とでも呼んだらよいだろうか。
速球に差し込まれることを怖れない。詰まらされることを怖がらない。そんなこと心配するより、投げ込まれたボールをできるだけ長~く見て、正確に捉えて、あとは振りに振り込んで磨きあげたスイングスピードで弾き返してやろう!
そんなスラッガーとしての矜持が伝わってくる猛スイングである。
ストライクからボールになる、いわゆる誘い球の変化球の見極めなら、むしろ清宮より安田のほうが達者だろう。
芯で捉えなくても見えなくなるほど飛ばせるのが清宮の怖さだが、芯で捉えられる確率とその時の飛距離なら、安田尚憲、ぜんぜん負けていない。
安田のような打者って過去にいたかな……?
安田尚憲の前に、彼のような長距離砲、誰がいたかな?
ふとそう思って調べてみた。
これだけの堂々の体躯に打席での貫禄、風格。
高校生に貫禄、風格はおかしいだろう……いやいや、何年かに1人、そんな大人顔負けの大器が実際に現れるから、日本の高校野球は興味深いのだ。
体躯、風格……さらに、将来クリーンアップの主軸を何年にもわたって務められるだけのパワーと技術、そして強靭な心身。
スーパープレーはしなくても、捕球体勢に入った打球は堅実にアウトにできる守備力と、右中間を三塁打にできるぐらいのベースランニング。
去年はいなかった。
その前の年の、広岡大志(智弁学園→ヤクルト)、オコエ瑠偉(関東一→楽天)、平沢大河(仙台育英→千葉ロッテ)はちょっと違うだろう。
2014年の岡本和真(智弁学園→巨人)とは“技術”が違うし、そうなると、2012年の大谷翔平(花巻東→日本ハム)、鈴木誠也(二松学舎→広島)か、2009年の筒香嘉智(横浜→DeNA)までさかのぼることになる。