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ランを“ブーム”で終わらせないために。
東京マラソン仕掛け人・早野氏の発想。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2017/10/18 16:50
「人間にとってのランとは?」という命題。
企業が、健康を意識して努力することを社員の能力の1つとして評価する「コーポレートフィットネス制度」について、早野氏はわかりやすい例え話で説明した。
「同じ大学を出た同期の池田さんと早野さんはともに係長で奥さんと子供が2人いるとします。能力は一緒。僕は仕事の後、ランニングせず酒を飲んでいる。池田さんは走っている。会社にその制度がつくられた場合、ある日、うちの子供が『パパ、どうして池田くん家は新しいゲーム機を持ってるのに、うちはないの?』と言ってくる。夜は奥さんに『あなた、なんで池田さん家はハワイ旅行で、うちは温泉なの?』と首を絞められる(笑)。極端な話、そういうことがないと変わらないと思うんです。企画力などの能力と同じように、運動すること、健康管理への能力を評価してあげないと。社長が訓示しようが、省庁が大上段から言おうが、変わらない」
早野氏の言葉を聞いていると、東京マラソンは1つの大会というだけでなく、まるで「人間にとってのランとは?」という命題も背負っているように思えてくる。最後に、会場の受講者からは年2回開催への意欲に関する質問が出た。
「東京の大都市の道路を年に1回止めるだけでも、多くの人にご迷惑をお掛けしていますからね(笑)。ただ、国が健康寿命を延ばそう、と言っているわけですから、単なるブームで終わらない仕組みをつくっていきたいです」
ランニングをただのブームではなく、ライフスタイルに。東京マラソンと早野氏の挑戦もまた終わりはないのかもしれない。
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