福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
サウジ戦現地分析と最終予選総括。
福西崇史が見た強化ポイントは?
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/09/07 11:55
オーストラリア戦から一転、サウジの狙いをつぶしきれなかった。やはり対策だけでなく、自分たちのベースを上げることも必要なのだ。
「今回のMVPは誰?」と聞かれると……。
とはいえ今回の予選、最終的には首位突破を果たすことができました。そのタイミングということもあって「MVPは誰ですか?」と聞かれたんですけど、今回は“この選手!”って挙げるのは本当に難しい(笑)。
初戦で警告を受けながらも全試合フル出場した吉田、4試合連続ゴールの原口や中盤の主力になった山口が予選を通じて貢献しました。ただ予選途中から前線の起点役となった大迫もそうですし、試合ごとに見れば、ひざの負傷から復帰した長谷部のリーダーシップ、代表復帰してUAE戦で大活躍した川島や今野らベテランから、オーストラリア戦で試合を決定づけた浅野と井手口といった若手まで欠かせない存在でした。
特定の誰かの活躍が……というわけではないのが、今回の予選を象徴したと思います。
イラク戦の勝利が呼び込んだ“自信の回復”。
その中で個人的にターニングポイントとなったと思う試合は、ホームで行われたイラク戦(○2-1)でした。初戦のUAE戦を落として、続くアウェーのタイ戦も2-0で勝利したとはいえ、スッキリとした形ではなかった。だからこそイラク戦は立て直していくためにも絶対に勝ち点3が必要だった。試合自体は同点に追いつかれる嫌な展開だったけど、後半アディショナルタイムの山口のミドルで勝ちきった。これが“自信の回復”を図るきっかけとなりました。
過去のW杯予選を見ても、苦しい展開でも勝ち点3を掴んだことで流れを取り戻したケースはあります。僕らが戦ったドイツW杯最終予選、アウェーのイラン戦(●1-2)直後のバーレーン戦(○1-0)がまさにそんな試合でしたからね。上手くいっていない状況こそ、やっぱり勝利がチーム全体に一番好影響を与えるものですからね。
今後の代表戦は10月、11月、3月にあるAマッチウィークでの強化試合になります。ハリルホジッチ監督は試したい選手の発掘と、チームの熟成を深める作業を進めていくことになる。監督はもちろん、選手にとっても日本代表としての時間は限られているんです。その中で選手それぞれの競争とともに、ベースをどこまで落とし込めるか。少ない機会を着実に生かしてほしいですね。
(構成:茂野聡士)