福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
サウジ戦現地分析と最終予選総括。
福西崇史が見た強化ポイントは?
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/09/07 11:55
オーストラリア戦から一転、サウジの狙いをつぶしきれなかった。やはり対策だけでなく、自分たちのベースを上げることも必要なのだ。
山口、柴崎、井手口の良さが出しきれなかった。
山口は攻守のバランスを取ることを重視して、相手アタッカーが入ってくるスペースを消そうとしていました。ただ山口の一番の長所は「前に出てボールを奪える」という点です。気候もありますが予測力を効かせて奪う、というシーンは少なかった。試合終盤に井手口とのダブルボランチに変更しましたが、サウジ戦に関してはこの形の方が2人がさらに活きたのかもしれません。
そして柴崎も少しやりづらそうにプレーしていました。最終ラインから中盤にかけてボールをつなぐ、という状況で積極的に顔を出していました。ただスペインでのプレーぶりがそうですが、もう少し高いポジションを取ったり飛び出したりして、パスやシュートに絡むのが柴崎の仕事です。そこでのプレーをもう少し増やす形を作りたかった。前でプレーしたいけど……というのは井手口も同様だったと思います。
長谷部不在時、リーダーシップを誰が取る?
そして長谷部不在のもう1つのポイントは「リーダーシップ」でした。会場は6万人の大声援があって、指示がほとんど聞こえない状況です。そこで「ボールを積極的に取りに行くのか、いったん構えてから守備をするのか」など意思統一できているかを見ていました。
試合序盤は比較的積極的な守備が機能していましたが、攻守ともに少しずつ中途半端になっていた。攻撃でも相手の帰陣が速かったから、もう少し柴崎を中心にボールを動かして、最後は原口に勝負するという形を使ってもよかった。
そこでボールを失って、原口や本田が守備に回る場面が増えた分だけ、攻撃で人数をかけた攻撃ができませんでした。岡崎が裏に抜けてもサポートする味方がいない、という場面もありましたね。失点後は途中出場で入った浅野のスピード、杉本の高さを生かそうとの意図はあった。そこで精度が高まり切らず、生かしきれなかった印象です。
攻守ともに「今後どう戦っていくのか」というのが見えづらかった。様々な条件が重なったとはいえ、貴重な実戦の場としてとらえると、少しもったいない部分でした。