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清宮幸太郎のプレースキックの記憶。
父・克幸「衝撃を最大化するセンス」
posted2017/08/13 09:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Yuki Suenaga
私が清宮幸太郎君をはじめて見たのは、秩父宮ラグビー場だったかと思う。
お父さんの克幸さんが早稲田大学ラグビー部の監督を務めていた時、何度かスタンドに応援に来ているのを見ていた。
「野球もラグビーも凄いんだって」
ラグビー愛好者の間でも、幸太郎君の評判はすでに響き渡っていた。
その数年後、克幸さんがサントリーの監督となり、サントリーのグラウンドで幸太郎君がプレースキックを蹴っていたのを目撃した。たしか、ファンとの交流会の日だったと思う。幸太郎君がそこに遊びに来ていたのだ。
その時のキックを見て、驚いた。いや、たまげた。
小学生が40mほどのプレースキックをゴールポストに決めていたのだ。
当時から身体は大きかったが、それだけでパワーが生まれるわけではない。ボールに対する力の伝え方に並々ならぬものがあると感じた。
当時はまだどちらの競技をプレーするか知らなかったから、ラグビーでも相当な選手になるだろうな、と思った。
球にインパクトを与えるセンス、というのがある。
私はその時の記憶が鮮明に残っていて、数年前、お父さんと同席する機会があり、プレースキックを見た時のことを話した。
すると、お父さんの克幸さんは幸太郎君のアスリートとしての能力を読み解く、「鍵」を教えてくれた。
「プレースキックにしても、バッティングにしても、球に与えるインパクトが大きい。このセンスに独特のものがあるよね」
ボールを蹴る、打つ、といったアクションには当然のことながら技術が必要だが、幸太郎君にはスポーツに親しみ始めたころから、「衝撃を最大化」するセンスがあったという。