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ドルトムントCEOが語った経営と愛。
「日本人はそう思わないんですか?」
text by
山口裕平Yuhei Yamaguchi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/07/22 11:30
クラブのポロシャツで登場したヴァツケCEO。経営者というよりも、サッカーとドルトムントを愛する人という印象が強烈だった。
「“私がクラブの一員”という意識が大切」
――ドイツでは賛否両論になっていますが、レッドブルが実質的に買収したRBライプツィヒはブンデスリーガのパワーバランスを変える可能性があるように見えます。ライプツィヒについてどうお考えですか?
「ライプツィヒは良いチームです。そこに疑いの余地はありません。
彼らにはお金もあります。しかし彼らの資金は、レッドブルとオーナーのディーター・マテシッツに依存しています。いつか彼らが“もうやる気がない”と言ったらライプツィヒはお終いです。それはドルトムントでは起こりません。我々は誰か1人にクラブの政治を任せるようなことはありませんから」
――Jリーグのクラブは企業のサッカー部が母体で、そのカルチャーが色濃く残っています。
「Jリーグにも固有の文化的な成り立ちがあるのでしょう。ドイツでは多くのクラブは市民、人々によって設立されています。ドイツ人は、“私がクラブの一員”という意識を強く持っているのです。ライプツィヒには17人しかクラブ会員(クラブ総会に参加し、クラブ運営について投票する権利を持っている)がいません。日本のクラブはどれくらいクラブ会員がいるのですか?」
――日本にはドイツのような、意思決定に参加できるクラブ会員の制度がほとんどありません。多くのチームは企業のサッカー部が母体で、人々はファンとしてクラブを応援しています。
「そうなのですか。ドルトムントにはクラブ会員が15万人います。我々はそういうクラブです。エボニックやプーマはスポンサーで、それ以上ではありません。その意味で、ドルトムント対ライプツィヒは、文化の衝突なのです」
――日本はドイツのようなサッカー文化を発展させるべきなのでしょうか?
「なぜ日本人は“自らがクラブの一員だ”という思いの重要さをもっと意識しないのでしょう? それこそが必要なものです。
イングランドもドイツと同じ文化で、クラブは人々が作ったものです。しかし今やそうしたクラブはイングランド人のものではなく、アメリカ人やタイ人のものになっている。それではいつか問題に直面します。なぜなら、外国人のオーナーは代表チームに興味がないからです。代表チームが良くなければ、サッカーへの熱は薄れます。それは危険です」