欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ドルトムントCEOが語った経営と愛。
「日本人はそう思わないんですか?」
text by
山口裕平Yuhei Yamaguchi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/07/22 11:30
クラブのポロシャツで登場したヴァツケCEO。経営者というよりも、サッカーとドルトムントを愛する人という印象が強烈だった。
Jリーグのクラブにもできるドルトムントの方法論。
――なぜドルトムントはその方法を選ぶのですか?
「理由は簡単です。12年前、我々は破産寸前でした。無一文の状況で、3000万ユーロの選手を獲得するなんて言えません(笑)。そんなお金はありませんから。
また、ドルトムントは過去を振り返ってもバイエルンやレアル・マドリーほどに強かったことはありません。ドルトムントは人口60万人の小さな街です。レアル・マドリーのような基盤はありません。
今の状況は十分すぎるほどなんです。(破産の危機から脱したばかりの)10年前、ドルトムントの売り上げが4億ユーロになると誰が予想したでしょう? しかし、それが今は現実です。ドルトムントはもう一文無しではありませんし、1ユーロの負債もありません。その意味で、このやり方は正しいのです」
――Jリーグのクラブは財政的に難しい状況にあります。ドルトムントのようなやり方ができると思いますか?
「多くのクラブがドルトムントの方法を使えると思います。実際、アジアから多くのクラブが我々と提携し、学びたいとやってきます。
このやり方は、我々にとって替えの利かない方法です。もしレアル・マドリーのような方法で突き進めば、どこかでまた違う方法が必要になります。つまり、市場が小さくなったり、放映権収入が減ったりすれば、多くのクラブはどの方法が正しいのかを考えることになるでしょう。
ただ考えてみてください。チェルシー、バイエルンのような方法を採用しているクラブは少ない。それ以外はバルセロナの道を目指しています。彼らは最も成功しているクラブの1つですが、ほとんどの選手は自前です」
――近年のサッカー界のバブルについてはどう見ていますか? イングランドや中国は多くの資金を投入しています。
「中国リーグはすぐに落ち着くでしょう。政府が表明したように、中国のサッカーは欧州の選手にお金をばらまくのではなく、自前で選手を育てなければなりません。
アメリカでも1970年代に同じようなことがありました。彼らはベッケンバウアーやペレなどを獲得しましたが、サッカーは“TVのスポーツ”にはなり得ないのです。サッカーにはその地域から育った選手が必要で、我慢をして自前の選手を育て、誰もがサッカーをプレーしたくなるように動かなければならない。昔アメリカはそれに一度失敗し、今は徐々に上手くいき始めている。
アジア諸国の取るべき道も同じです。日本はアジアの中で指折りのサッカー国ですが、ヨーロッパのトップとはまだ差がある。できることは、若い選手の育成だけです」