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栃木ブレックス、決勝進出の陰に。
選手の強気、コーチの献身、そして。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKyodo News
posted2017/05/26 11:30
黄色一色に染まった栃木ブレックスのアリーナは、チームの力を限界まで引き出すのだ。
ブレックス史上最高の試合だったのでは。
第4Qの追い上げの立役者となった熊谷は、3Pシュートを決めると雄たけびをあげ、両手を激しくスイングさせて、ファンを煽っていた。しかし、熊谷はこう振り返る。
「あんまり覚えていないんですよね」
照れ笑いを浮かべ、こう続けた。
「とりあえず、すごい歓声が聞こえたということだけは覚えていて。あんなに会場を煽ったのも初めて。もう、身体が勝手に動いたというか……」
筆者は、9月のブレックスアリーナでの開幕戦も、当時のブレックスアリーナの最多動員となる4035人が集まった10月23日のアルバルク東京戦も、4058人がつめかけた4月30日の千葉ジェッツ戦も会場にいた。
しかし、それらの試合を上回るほどの熱気が、5月21日の三河との試合だったと断言できる。
だから、田臥のこんな話も、真実味を帯びて聞こえる。
「チームもそうだし、自分もまだまだ成長できるという感じを持ってやっていますけど……。ファンの方どんどん熱くなってきているし、どんどん気持ちを込めてくれているなと、感じています」
シーズンの最終盤でも、まだ成長の余地を残す。選手が奮起すれば、コーチ陣がサポートする。ファンが熱を持てば、MCがさらに高めていく。それはこれまでもあったこと。しかし、ホームで行なわれる最後の試合で、さらにそのレベルはあがった。
もうこれ以上の力は出ない、そう誰もが思ったところから、新たな源泉が湧き出してきた。そう驚くような何かが、栃木ブレックスには残っていた。そして、それが可能だったのは、全員が同じ方向をむいていたからだった。