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栃木ブレックス、決勝進出の陰に。
選手の強気、コーチの献身、そして。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKyodo News
posted2017/05/26 11:30
黄色一色に染まった栃木ブレックスのアリーナは、チームの力を限界まで引き出すのだ。
主力を休ませることができなかった三河の誤算。
栃木が猛烈な追い上げをみせたことで、三河はエースの比江島慎と、シューターの金丸という主力を再びコートに戻さざるを得なかった。1試合目を落としている以上、彼らがこの試合に勝たなければ全てが終わってしまう。
対する栃木は、田臥、古川、遠藤の3人を温存した。彼らはGAME2の第4Qで、1秒たりともプレーしていない。
試合後に敗因を問われた比江島は「一番きつかったのは体力面」と話している。
主力を休ませつつ、相手の主力を引きずりだすほどのパフォーマンスを見せた栃木のサブ選手たちの奮闘がなければ、GAME3での劇的な勝利など望めなかったはずだ。
アリーナの雰囲気は、栃木一色だった。
では、なぜそれが可能だったのだろうか。
2試合目の終盤で猛烈な追い上げをみせるなかで、アリーナのこんな場面があった。
栃木のファンが手を叩き、声をあげる。
「ディーフェンス、ディーフェンス!」
アリーナのMCを務めるMC SEKIこと関篤がさらなる応援をうながす。
「ブレアリー!」(ブレックスアリーナのこと)
「ディーフェンス、ディーフェンス!!」
さっきよりも大きな声になった。
「ブレアリー!!」
「ディーフェンス、ディーフェンス!!!」
三河にとって、あの雰囲気がどれだけやりづらいものだったか。
このシーンでもわかるよう、攻守が目まぐるしく入れ替わるバスケットにおいて、アリーナMCに多くの言葉を紡ぐ余地はない。あの場面でも、MC SEKIは「ブレアリ」という4つの言葉しか発していない。
しかしその単語には「会場にいるすべての人たちの声援が、ブレックスが逆転するために欠かせないパワーになる」という意味がこめられている。その意味を100%理解できるファンがいるのはもちろん、限られた時間と言葉でそれを表現できるMCがいる。それがプロの仕事だ。