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六大と東都はパワー型投手不足か?
地方リーグ全盛の流れに抗う10人。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/04/30 07:00
早大相手に貫録のピッチングを見せた明大の森下暢仁。プロも注目の逸材だ。
今季の東都は久々に球速の出る投手が多く並ぶ。
ただ東都の実戦力に、昨年は陰りが見られた。単純にストレートの速い投手が少なくなったのだ。前述の黒木以外で150キロに迫るストレートを投げるのは、鍬原拓也(中央大)、高橋遥人(亜細亜大)くらいで、観戦していても心が沸き立つような選手は少なかった。
それが今年は様子が違っている。筆者が観戦した中でストレートが150キロ前後を計測したのは次の4人だ。
4月12日 鍬原拓也(中央大4年)最速151キロ、小玉和樹(国学院大2年)151キロ
4月18日 山本龍之介(日本大2年)149キロ
4月19日 小又圭甫(国学院大4年)152キロ
変化球との組み合わせを覚えた鍬原はドラ1候補に。
鍬原は昨年までストレートの速さに依存し、コーナーワークや緩急の意識に乏しく、抑えを任されていた時期の増井浩俊(日本ハム)を見るようだった。それが今年は150キロ前後のストレートで打者を圧倒しながら、チェンジアップ、スライダーを多投してかわす技巧も備えるようになった。4月12日の東洋大戦は9回投げて被安打4、与四球2、奪三振14で完封。今年のドラフト1位が早くも決まったという声があちこちから挙がっていた。
小又は4年ながら4月14日の専修大戦がリーグ戦初登板という遅咲きの選手だ。大学1年時の10月に第1肋骨を骨折、2年時の5月に右ヒジのトミー・ジョン手術を受けるなど故障が相次ぎ、3年間リハビリを余儀なくされた。その実戦経験の少なさが投球の未熟さにつながっていることは否めない。
体の使い方がテークバックまでは上手投げ、投げに行くときはスリークォーターとばらつきがあり、それがストレートの抜けや右打者の内角を攻め切れない原因になっている。しかし、デビュー戦でストレートは150キロを超え、4月14日の専修大戦でも先発して3回無失点、4月19日の日本大戦がやはり先発して3回を1失点と、いずれもチームの勝利につなげている。長いイニングを投げられるようになれば有力なドラフト候補誕生と言っていいだろう。