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最後のタイトルから12年が経ち……。
東京ヴェルディ、3つの「P」で復活。
posted2017/04/13 11:10
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
「テープを投げるよ。ほら手伝って」
国立競技場のゴール裏にいた少年は、見知らぬ大人から緑色の紙テープを渡された。
2005年元日、天皇杯決勝。東京ヴェルディ1969(現東京ヴェルディ)はジュビロ磐田を2-1で破り、8年ぶりのタイトルを獲得する。合図に合わせ、紙テープを投げ込んだのは、当時9歳の高木大輔。スタンドから濁流のように広がる、美しい緑の光景を記憶している。
2007年11月25日、味の素スタジアム。ホーム最終戦、東京Vは愛媛FCに2-1で勝利し、J1昇格をほぼ手中に収める。この年、東京Vジュニアで全国制覇を成し遂げた高木大は、チームメイトとともに応援した。歓喜に沸くゴール裏、頭上から緑の折り鶴が舞った。
「いつか自分もあのピッチに立って活躍する。チームをもっと強くするんだと無邪気に思ってましたね。それからだんだんと現実を知ることになるんですが」
そう苦笑する高木大は、2013年にユースに所属しながら2種登録でJリーグデビュー。同期は俊英がそろい、澤井直人、安西幸輝、畠中槙之輔、菅嶋弘希(現ジェフユナイテッド千葉)の計5名がトップに昇格している。チームの根幹を担うまでに成長した、新しい東京Vを象徴する世代だ。
ここ3年は、J3への降格すらチラついていた。
あの天皇杯優勝から長い歳月が流れた。旧国立競技場は取り壊され、もう跡形もない。'08年、3シーズンぶりにJ1を戦った東京Vは、わずか1年でJ2降格。今季9年目のJ2を戦っている。ここ3年の成績は20位、8位、18位とJ1が遠のくばかりか、さらなる降格の危機さえあった。
'09年9月に日本テレビが経営から撤退し、クラブの規模が縮小したことを受けてアカデミー出身の選手を中心にチームを編成してきたが、成果がなかなか出ない。そこで、今季の東京Vは大きく舵を切る。
スペインからミゲル・アンヘル・ロティーナ氏を監督に招聘。ロティーナ監督はリーガ・エスパニョーラでの実績が豊富で、'99-'00シーズン、オサスナで1部昇格。'02-'03シーズンはセルタを4位に導き、翌年欧州チャンピオンズリーグベスト16。'05-'06シーズン、エスパニョールを率いてスペイン国王杯を制した。その一方、3つのクラブで降格も経験している指導者だ。