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現役名人がコンピューターに負けた。
将棋電王戦が、人間同士と違う部分。

posted2017/04/09 08:00

 
現役名人がコンピューターに負けた。将棋電王戦が、人間同士と違う部分。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

PONANZAが考えた初手を「電王手一二さん」という名前のマシンが打つと、佐藤名人は天を見上げた。この日一番大きく表情が動いたのはこの瞬間だった。

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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Takuya Sugiyama

「将棋電王戦 ソフトが名人破る」

「将棋電王戦 佐藤名人が人工知能に敗れる」

 4月1日の夜、第2期電王戦・第1局が終局を迎えるやいなや、ニュースはいち早くこの言葉を並べた。

 コンピューター将棋ソフトの中でも最強と言われる電王「PONANZA」と佐藤天彦名人の対局。現役のタイトルホルダー、それも順位戦を経て決まる名人がコンピューターと相まみえるということもあり、大きな注目が集まった一戦は71手で先手・PONANZAの勝利に終わった。

 ネット配信で多くの人々が観戦し、コメントを寄せた一戦の結末は、各メディアでも大きく報じられた。

 筆者も2012年から始まった電王戦を楽しみに見つめていたファンの1人である。だからこそ、個人的に一度考えてみたいことがあった。

 スポーツ的な視点で見た時、人vs.コンピューターという構図はどう見えるのか――。

マインドスポーツの将棋で、コンピューターと戦う。

 将棋をはじめとしたボードゲームは“マインドスポーツ”とも呼ばれ、フィジカルコンタクトがない分だけ人とコンピューターとの対戦が可能となる。人とコンピューターが向き合う対局の空気感とは、どのようなものなのか。今さらだが、そんな疑問を持っていた。

 それを知るために、第1局の会場となった日光東照宮へと向かった。東京では桜が開花する中、会場の外は雪景色。物音ひとつしない中で将棋盤の前には、PONANZAの考えた手を巧みに指す「電王手一二さん」が控える。ほどなくして現れた佐藤名人と対峙する様子は、静謐という言葉が似つかわしかった。

【次ページ】 普通なら“あり得ないだろ、それ”という初手。

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