スポーツ百珍BACK NUMBER
現役名人がコンピューターに負けた。
将棋電王戦が、人間同士と違う部分。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/04/09 08:00
PONANZAが考えた初手を「電王手一二さん」という名前のマシンが打つと、佐藤名人は天を見上げた。この日一番大きく表情が動いたのはこの瞬間だった。
名人戦と並行して、電王戦に挑んだという勇気。
「いくら理論的に厳しくとも、自分に期待してくれる人々はいらっしゃる。そういった気持ちを受け入れて、大変な強敵に相対して勝機を見出していきます」
佐藤名人は5月20日、姫路城で行われる第2局に向けて、こう話している。
名人戦と並行したタイミングで電王戦に臨んでいる勇気自体も、称えられるべきポイントだと思う。
PONANZAが現役の名人を下したという事実は、もちろん衝撃ではある。ただそれとともに、人と人同士が将棋盤を挟み、感情を秘めつつも鎬を削る魅力に気づかせてくれた。
そういった意味合いでも、コンピューター将棋が果たした役割は、きっと大きい。