マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校野球部はガチすぎて入りづらい。
甲子園を目指さない選択肢が必要だ。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/04/07 07:30
人生のある時期、懸命に1つのことをする価値は確かにある。しかし、それが強迫観念になっては失うものも多い。
中学硬式に入らないと甲子園もプロも無理?
これが準決勝、4強に残ったチームになると、合計80人のベンチ入り選手のうち70人が硬式であり、決勝を戦った大阪桐蔭と履正社の2チームで調べると、なんとベンチ入り40人のうち硬式じゃなかったのは、履正社・松井百代(ひゃくだい)ただ1人だったから、もっと驚いた。
このセンバツは「中学硬式」の大会だったのだ。
そういえば記者席でも、選手たちの中学当時の活躍について語られることが多くなった。○○ボーイズで全国制覇したとか、××シニアでもう140km投げていた、とか……。
中学硬式のエリート、腕利きたちが高校野球の名門、強豪に進んで甲子園で活躍し、それをステップにしてプロ野球への道を本格的に進んでいく。そんなプロセスが出来上がりつつある。
この“流れ”を知ってしまったら、シニアやボーイズで野球をしないと甲子園には出られない。プロでやろうと思ったら、まずシニア、ボーイズ、中学硬式に入らないと、その先がない。そんな錯覚にかられてしまいそうだ。
それほどに、中学硬式→高校名門→甲子園→やがてはプロ、という流れが太く、強くなっていることは間違いない。
高校野球のセミプロ化が一概に悪いわけではない。
悪いとは思わない。それも高校野球の、1つのあり方であろう。
高校野球のセミプロ化、プロへの予備校化。
こういう表現をすると、すぐみけんにしわを寄せるのが“この国”だが、たとえば、東大、京大を目ざす生徒が放課後に「河合塾」へ向かうように、プロ野球を目ざす名門・強豪高校の生徒たちが放課後に野球部の練習に向かう。
どこが違うのかな……という思いはある。
勉学と学歴で身を立てようとして一生懸命努力する生徒がいる一方で、野球で身を立てようと一生懸命努力する生徒がいる。両者の努力になんの違いがあるというのか。