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甲子園で21点は取る方だって辛い。
センバツ21世紀枠に足りない視点。

posted2017/04/06 07:00

 
甲子園で21点は取る方だって辛い。センバツ21世紀枠に足りない視点。<Number Web> photograph by Kyodo News

多治見相手に21得点を挙げた報徳学園。21世紀枠相手に対しても全力で戦ったからこそのスコアとなった。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 今選抜大会の決勝、履正社対大阪桐蔭のカードは、おそらく今、日本で1位、2位にランキングされるチーム同士の戦いだった、と言ってもいいのではないか。このカードが実現したのも同都道府県から複数チームの出場が可能な選抜大会ならではのことだった。

 チームの完成度という話を別にすれば、改めて、選抜大会は夏の選手権大会よりもレベルが高いと感じた。各都道府県大会の上位チーム同士で、さらに地方大会を行い、そこの上位チームを選んでいるのだから当然といえば当然である。しかも選出校も夏の49チームよりも17チームも少ない32チームと絞られている。

 そんな中だけに、今年は特に21世紀枠で出場した3校中2校のチーム力が見劣りした。報徳学園(兵庫)に0-21で大敗した多治見(岐阜)と、静岡に3-12の大差で敗れた「部員10人」で話題となっていた不来方(岩手)だ。

 厳しい言い方をすれば、勝負になっていなかった。

バントでアウトを意図的に与えているのでは?

 不来方と静岡の試合を見ていて考えずにはいられなかったのは、静岡サイドの気持ちだった。

 静岡は1回表に1点を先制されたものの、その裏、相手の拙い守備に助けられ5点を返し、難なく逆転する。その後、送りバントやスクイズを仕掛けるシーンがあったのだが、その都度、ラジオの実況中継では、静岡はまだ攻撃の手を緩めない、といったニュアンスの言葉が使われた。

 しかし、私には逆に映った。静岡はそんな言い方は決してしないだろうが、不来方の頼りない守備を見て、「バントでアウトを意図的に与えているのでは」と。

 というのも、砂川北と鵡川(ともに北海道)をそれぞれ3度ずつ甲子園に導いた「バント嫌い」で有名な佐藤茂富が、かつてこんな話をしていたからである。

「俺は地区予選の1、2回戦ぐらいは、バントをよく使うんだわ」

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