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キャプテン+10番は海外以上の挑戦。
横浜FM・齋藤学が担う「俊輔の後」。
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKyodo News
posted2017/02/23 17:00

昨年、齋藤学は2度目のブレイクを果たし、初のベストイレブンに名前を連ねた。待望論が根強い代表復帰も視野に入れている。
「俊さんはピッチ内外で頼りにされていました」
齋藤は言った。
「これまでも自分がチームを引っ張っていく気持ちでやっていました。でもそれは自分が覚悟を持ってやっていくだけであって、課せられたものじゃない。今年は10番を背負ってキャプテンになって責任から逃げられない立場になったということ。昨年は2ケタ(得点)取って、Jリーグのベストイレブンに選ばれましたけど、チームが勝ってくれるなら極端なことを言えば自分が3得点でもチームが優勝すれば満足できる。チームの結果というところに、去年以上により目を向けていきたいと思うんです。
俊さんはピッチ内外で、みんなから頼りにされていました。その10番の背中を自分はずっと見てきました。だからこそチームが苦しいときに今度は自分がその背中を見せていかなきゃいけないって」
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10番を背負うと心に決めた齋藤は、ジュビロ磐田に移籍した中村に電話を入れていた。
「自分が10番を背負いたいと思っています」
責任感を強めていきたいこと、チームを背負う覚悟があること。ストレートに自分の思いを伝えると中村からは「自分らしくやればいい」と背中を押された。そして「頑張れ」とも。
昨年12月29日の天皇杯準決勝。鹿島アントラーズに敗れてピッチに崩れ落ちた齋藤の背中をポンと叩いて、体を引き上げてくれたのが誰あろう中村であった。今思えば、あの光景が10番を託し、託された瞬間であったのかもしれない。
「行くタイミングはベストのときにやってくる」
海外移籍の思いは、今なお強い。
3年前にヴォルフスブルクから正式オファーが届きながらも、彼は横浜残留を決めた。それはまだ横浜で得なければならないことがあると感じたからだ。
「行くタイミングというのはベストのときにやってくる」
そう考える齋藤にとって昨季、1年通してキレキレのパフォーマンスを見せて代表にも復帰したことで欧州に渡るタイミングがやってきたと確信できた。関心を抱いてくれたクラブはあった。だが正式オファーには至らなかった。