サムライブルーの原材料BACK NUMBER
キャプテン+10番は海外以上の挑戦。
横浜FM・齋藤学が担う「俊輔の後」。
posted2017/02/23 17:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Kyodo News
望みどおりにならなければ、別の望みをつかむ。
今オフ、海外移籍を模索した齋藤学はマーケットが閉じた後、横浜F・マリノスとの契約を更新した。1月のタイキャンプには参加せず、2月に入ってからは契約切れだったために練習生扱いが続いていた(8日に更新発表)。
川崎フロンターレからのオファーも真剣に検討しつつ、最終的には横浜残留を決めた。そしてもうひとつ、残留するならば中村俊輔の移籍で空いていたエースナンバー「10」を背負うことも。
望みとは、彼にとって高みを目指せるもの。
欧州移籍に相当するのが、横浜の10番であった。後日チームからキャプテン就任を打診され、引き受けることにもなった。
「どうです、いい雰囲気でしょ?」
開幕が迫ったある日、筆者が訪れた横浜のトレーニングは活気に満ちていた。ゲーム形式の練習では激しい接触プレーが多く、その熱の発信源が齋藤であった。高いモチベーションは、見ているほうにも伝わってきた。
練習後、顔を合わせるや否や彼は言った。
「どうです、いい雰囲気でしょ? 若いメンバーが多いから(自分たちで)やっていかなきゃいけないってみんな思っているし、力もある。激しい当たりとかあってもすぐに立って、次のプレーやろうっていう空気が出ているし、こういうことを続けていきたいと思うんです」
言葉の端々から、10番として、キャプテンとしての自覚が滲み出ていた。
横浜は今オフ、大黒柱の中村俊輔を筆頭に榎本哲也、兵藤慎剛らチームの功労者が去るなど激震が走った。大きな変動期に入ったチームにおいて、過去に木村和司や中村がつけた偉大なマリノスの10番をこのタイミングで背負うことは、育成組織出身である齋藤にとって使命感に近かった。