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笑わない男・小笠原満男が笑った日。
現チームの礎を作ったあのタイトル。
posted2017/01/06 11:00
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Kiichi Matsumoto
2017年、天皇杯決勝戦。鹿島アントラーズが延長前半4分の勝ち越し弾を守り、クラブ5度目となる天皇杯優勝を遂げた。これで、鹿島が手にしたタイトルの数は19個となった。
初のタイトル獲得に期待が集まった川崎フロンターレだったが、2016年11月23日のJリーグチャンピオンシップに続き、鹿島にそれを阻まれた。
チャンピオンシップ敗退から1カ月後の12月24日、天皇杯準々決勝でFC東京をやぶり、「良いときのフロンターレが戻ってきた」と大久保嘉人が絶賛するほど、川崎は調子をあげていた。負傷離脱だった小林悠や大島も復帰している。
一方の鹿島は、チャンピオンシップ決勝戦で浦和を下し、Jリーグ王者に輝いた。その後はクラブワールドカップに出場。劣勢であっても苦しい時間をしのぎ、得点を奪い、試合を終わらせるという、鹿島スタイルが世界舞台でも通用することを示した。決勝戦ではレアル・マドリー相手に延長戦へ持ち込み、最後は2得点を許し4-2と敗れたものの、世界を驚かせる躍進を見せた。
小笠原の「キレるパフォーマンス」の効果は?
休む間もなく、天皇杯準々決勝でサンフレッチェ広島、準決勝で横浜F・マリノスを抑えて、約1カ月間で3度目の決勝の舞台に立つ。
「川崎は本当にうまかったし、なかなか僕らがリズムに乗れないところもあった。それでもクラブワールドカップから、最後のところで守りきるといういい経験が積めていたので、焦りはなかった。いつか必ず点は入るし、全員で戦えていたから、不安にもならなかった。
前半を0-0で行ければ絶対に勝てるという自信があるし、前半に1点取れたら、もっと優位になる」
鹿島の赤崎秀平がそう試合を振り返るように、序盤、試合のペースを握っていたのは川崎だった。
18分、川崎のファールでプレーが止まる。川崎の中村憲剛が、鹿島サイドにけり返したボールが、ファールで倒された小笠原に直撃。立ち上がった小笠原が中村に詰め寄り、両チームの選手がエキサイトした。
「怒っていたわけじゃなくて、パフォーマンスのひとつで。そういう細かいところにこだわって、 流れを引き寄せるじゃないけど、闘うんだぞって(示したかった)。早いリスタートだとか、そういう駆け引きはこのチームで学んできた」と話す小笠原。