F1ピットストップBACK NUMBER
F1最終戦で勃発したハミルトン造反。
チームの戦略介入、やりすぎの域?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2016/12/25 11:00
ハミルトン(44番)が見せた選手権制覇への執念。そこには戦略を超えた人間としてのパッションがある。
ここ最近、エンジニアが必要以上に戦略に介入する。
2007年のハンガリーGPの予選で、ピットストップエリアに必要以上に長くとどまったフェルナンド・アロンソの行為も、ある意味、チームの指示に背くものだったと言ってよい。
現在のF1は、さまざまなデータをエンジニアたちがピットで入手できるようになり、コース上を走っているドライバー以上に予測を立てやすくなっている。いまやすべてのチームに戦略家(ストラテジスト)が存在し、チームによってはドライバーごとに1人ずつ割り当てて、刻々と変わるレース状況に対応しているところもある。
そのため、最近はエンジニアたちが必要以上に戦略に介入し、レースをコントロールする傾向がある。
「マンセルvs.ピケ」「セナvs.プロスト」という過去。
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しかし、ドライバーの心をコントロールするのは、必ずしもコンピュータによって弾き出される正しい戦略だけとは限らない。
特にチームメート同士でタイトルを賭けて争っている場合、チームがドライバーをコントロールするのに限界があることは、「マンセルvs.ピケ」、「セナvs.プロスト」という歴史が如実に物語っている。
ただし、たとえそのような事態となっても、私たちはそれでチームに管理能力がないとは判断しない。むしろ、チームによってコントロールされなかった場合のほうが、素晴らしいバトルとして、私たちの記憶に長く残っている。