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初の王者戴冠5日後にF1引退発表!
ロズベルグが衝撃の決断に至った経緯。
posted2016/12/08 11:15
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
2016年12月2日、1本のツイートが世界中を駆け巡った。
「I have a message for you」と題されたツイートの送信者は、5日前に初のF1チャンピオンになったばかりのニコ・ロズベルグ。その内容は、今シーズン限りでレースから引退するという衝撃的なものだった。
「25年間レースを続けてきて、F1のチャンピオンになることは、僕の『たったひとつの』夢だった。懸命な努力と、苦痛と、犠牲を払ってきた。その目標をいま、僕はやり遂げた。山を登り、頂上に立った者にしか、この気持ちは味わえない。そして、いまの僕が抱く最も強い思いは、僕の夢を実現させるために支えてきてくれた皆への、深い感謝だ」
「チャンピオンになったらレース生活を終えよう」
31歳のロズベルグが引退を意識し始めたのは、今年の日本GPの直後だった。
「鈴鹿でのレースを制し、タイトル獲得という運命を自分の手のひらで握り始めたときから、僕は大きなプレッシャーを感じ始めた。そして、こう考えるようになった。『チャンピオンになった暁には、レース生活を終えよう』と」
日本GPは、ロズベルグにとってターニングポイントとなった一戦だった。
ドライバーたちがもっともチャレンジングだと認める名コースの鈴鹿を初めて制しただけでなく、ドライバーズ選手権で2位のルイス・ハミルトンとの差を33点に広げたからである。残りは4戦。現在のポイントシステムは優勝が25点で2位は18点。4戦すべてをハミルトンが優勝しても、ロズベルグがすべて2位に入れば、自力でタイトルを獲得できるからだ。