“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“高校No.1ストライカー”の意地。
京都橘・岩崎悠人の非凡なる頭脳。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/11/26 11:00
試合を通じて徹底的なマークを受け続けた岩崎だが、それを逆手に取ったチーム戦術でも非凡な才能を見せた。
得点こそ無かったが、間違いなく岩崎の勝利だった。
数度のロングボールに対し、岩崎と途中出場のMF梅津凌岳、DF稲津秀人らがプレッシャーをかけ続け、混戦模様となったところに飛び込んで来た左サイドバックの水井直人がスライディングシュートを放ち、ついにゴール。最後まで岩崎を軸に攻め抜き、終了間際の相手のパワープレーを凌いだ京都橘が1-0で5連覇を達成し、5年連続6度目の選手権出場を果たした。
「点を取れなかったことは本当に落ち込みました。『ファイナルで岩崎ノーゴール』は、本当に悔しかった」
試合後、彼はゴールという結果を残せなかった自分自身に不甲斐無さをにじませた。
だが、岩崎が常にゴールに近い位置で相手DFにプレッシャーをかけ続け、細かいストップ&ダッシュを繰り返して積極的に仕掛け続けたからこそ、京都橘の攻撃の時間は長くなり、京産大附はカウンターの糸口を終始見出せなかったのだ。
「ちょっと小川(航基)君のプレーを意識しました」
彼の献身的なプレーが勝利への流れを導き出したのは間違いなかった。
それをそのまま本人に伝えると、一連のプレーの裏側には自身の変化があることを口にした。
「こういう細かいプレー、実は代表で学んだことなんです。アジア予選(AFC U-19選手権)のときも、味方の位置を常に見ながら、ショートのダッシュを繰り返すことで、よりいいタイミングでボールを引き出せたり、相手を押し込めると思ったんで。ちょっと小川(航基)君のプレーを意識しました」
優勝を果たしたAFC U-19選手権で、小川航基(ジュビロ磐田)とツートップを組み、小川との距離感を常に意識しながらプレーをした。
そこで周りを最大限に活かし、チームとして切り崩す術を身につけ、さらにゴール前に残って細かい駆け引きをしながら、相手DFに脅威を与え続けた小川のプレーに感銘を受けた、というのである。
彼の良さの1つは「吸収力の高さ」でもある。
固定観念に縛られること無く、常に柔軟性を持って他者から学び取ろうとする姿勢を持っている。この岩崎の姿勢が、決勝戦を勝利に導いたのは明白だった。