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田中正義獲得でドラフトは満点か?
ソフトバンクに潜む“中継ぎ問題”。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/10/26 17:00
セットアッパーの森は3年連続50試合以上登板、防御率も2点台をキープした。ただ“勤続疲労”を考えれば、新たな人材を確保する時期だったかもしれない。
工藤監督が就任した当初の理想を思い出せるのか。
調整に関しても、キャンプ時点ならば先発の準備をしながらでもリリーフに対応するのは問題ないという。それについては田之上慶三郎一軍投手コーチ(同)に訊いても同意見だった。
今ここで、2年前に工藤監督が就任した当初の理想として掲げていた理念を改めて思い出したい。
指揮官の基本的な考えも「投手は先発を目指すもの」。そして先発投手のレベルアップ、育成のためのひとつのアイデアとして、「先発競争枠」を設けることを挙げていた。先発ローテーション6人のうち、固定して回すのは5人まで。残る1枠は投手陣の競争心をあおるために使うというものだった。
「僕が現役の時もそうでしたが、先発6人をすべて埋めてしまうと、入り込む余地がなくなってしまう。そうなるとリリーフ陣のモチベーションを保つのが難しくなるんです。だから、常に1枠を空けておいて、リリーフで好投した投手をそこに入れていく。そして、先発でチャンスを掴めなかった人をリリーフへ。その投手は悔しいでしょう。ならばまた先発に戻れるように頑張ればいい」
この理念については監督就任前に自著で記しており、コメントは就任時に聞いたものを再掲したのだが、実際に2年間で実行されることはなかった。理想と現実のギャップもあったのだろう。
だが、挑戦者となった今、このチームは新しいチャレンジを必要としている。そして、現状のままに来季に臨めば、V奪回の道はより一層険しくなるだろう。岩嵜や東浜がそのまま配置転換となるのか。武田翔太や千賀滉大といった伸び盛りのエース候補たちさえも安泰ではないという刺激を与えるのか。黄金ルーキー田中だって競争に敗れれば……。首脳陣の手腕が大いに試される今オフとなりそうだ。