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軽量級とはまた違う確かなロマン。
小原佳太のKO負けに階級の壁を思う。
posted2016/09/15 11:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
AFLO
8月末に東京・大田区総合体育館でダブル世界タイトルマッチが開催され、9月4日には“怪物”井上尚弥(大橋)がこちらも世界王座の防衛戦を行い、16日にはV10王者の山中慎介(帝拳)と元2階級制覇王者の長谷川穂積(真正)が大阪で競演する。
大きな試合が慌ただしく続く中、一部の熱心なファンが注目する試合が9日、ロシアのモスクワで行われた。元日本・東洋太平洋スーパーライト級王者の小原佳太(三迫)が王者エドゥアルド・トロヤノフスキー(ロシア)に挑んだ一戦は、小原の2回TKO負けに終わった。
世界タイトルマッチが頻繁に開催され、世界チャンピオンが次々と誕生する昨今においても、やはり中量級以上は日本人にとって大きな壁となっている。日本の生んだ世界チャンピオンは既に80人を数えるが(日本ジム所属の外国籍選手を含む)、スーパーライト級で世界を獲ったのは藤猛、浜田剛史、平仲明信の3人のみ。平仲が世界王者となったのが1992年の4月だから、小原は実に24年ぶりに同階級の世界ベルトを日本に持ち帰ろうとしたのである。
15勝のうち、14試合をKOで勝ってきた小原。
そのような状況でも「小原だったら」という期待感はあった。デビュー戦で敗れたもののその後は連勝を重ね、日本王座、そして東洋太平洋王座を獲得した小原は、15の勝利のうち14試合でKOを収め、国内では頭ひとつ抜け出た存在だったからだ。
昨年11月には米マイアミまで飛んで世界ランク9位の選手との挑戦者決定戦に挑み、結果は引き分けながら、試合内容は圧倒的に優勢だった。アウェイの海外を経験済みで、高校の地理・歴史の教員免許を持ち、サラリーマンも1年間経験している小原だけに、モスクワでも臆することなくチャンピオンに挑み、そしてベルトを持ち帰るのではないか─―。
そんな期待が確かにあったのだ。