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日本が銀獲得、ボッチャという競技。
ポイントは究極の創意工夫と戦略性。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2016/09/13 17:00

日本が銀獲得、ボッチャという競技。ポイントは究極の創意工夫と戦略性。<Number Web> photograph by AFLO

ボッチャのように男女が一緒に参加できる競技は、オリンピック、パラリンピックを通しても少ない。

競技歴の長い海外に対抗するために編み出した戦略。

 ボッチャは戦略のスポーツだということがある。まずはジャックボールをどこに配置するかから駆け引きが始まる。長いボールを投げるのが得意か短いボールを投げるのが得意か、自身と相手の特徴も考えつつ場所を狙って配置するからだ。投げるボールもまた、いかに相手の投球を近くに投げさせないか、展開を考えながら投じていく。だから頭脳戦、戦略のスポーツだと言われる。

 とはいっても、どのように戦略を構築しても、狙った位置に投げられなければ意味はない。

 チームは4つあるクラスのうち、BC1、BC2のクラスから出場している。勾配具(ランプ)を利用しない、つまり自分で投げなければいけないが、運動機能面から、筋肉をいかにして使うか、そのトレーニングが重要となる。

 ただ、競技の存在は決して広く知られてはいない。イコール、活動資金が少ない。以前は日本代表の海外遠征は選手の自費で行われていたこともある。今でも競技に取り組んでいる選手が、活動資金を募るケースもある。

 自分が魅力を感じて、打ち込んできた競技を知ってほしい、競技の地位を向上させたい。そんな思いで挑んだリオで、ついにメダルを獲得したのである。

高校生でボッチャに夢中になった広瀬。

 そこには工夫もあった。

 今でこそ、ジャックボールの位置は範囲内のあちこちに置かれるが、もともとはコートの中央付近に置くのが常道だった。

 それを変えたのが日本だった。競技の歴史が長い海外勢に比べ、劣勢にあった日本は、組み立てから工夫をこらし、相手をかく乱することで勝利を手にしようとしたのである。

 個人でも、技術を磨いてきた。例えば、先天性脳性まひの広瀬。高校生のときにボッチャを知ると夢中になり、北京からパラリンピックに出場し、チームのエースとなった。ロンドンのあとにはバックスピンをかけたボールを身につけ、それが試合にもいかされた。

「魅力を伝えられたと思います。銀メダルの感触は、とにかく重いです」

 世界1位のタイにはおよばなかった。

 だが、準々決勝で難敵の中国をタイブレークの末に破り、準決勝ではロンドンで敗れたポルトガルにリベンジするなど成長を見せた。

 手にしたメダルは、競技の地位向上を心に、その思いをかなえるために創意工夫とトレーニングを重ねてきた過程があってこそだった。

 このあとの個人戦でも、勢いを引きついでほしい。

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