野球善哉BACK NUMBER
甲子園決勝に導く2年生捕手の判断力。
北海・佐藤大雅の“2つのスパイス”。
posted2016/08/20 19:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
右翼手がボールを後逸し、打者走者が生還して1点差に詰め寄られた8回表、北海の捕手・佐藤大雅は「勝つか負けるかの勝負だったので、大西さんを信じるだけだった」と振り返った。
迫りくる秀岳館打線に脅威を感じながら、エース大西健斗をリードする佐藤大は努めて冷静に打者の裏をかいていった。
夏の甲子園・準決勝第2試合の北海vs.秀岳館は、強打の秀岳館打線を北海バッテリーがいかに封じるかに焦点が絞られていた。
試合前、北海の平川敦監督はこう分析していた。
「秀岳館打線は追い込まれると、ノーステップ打法にして逆方向を意識して振ってくる。そういう打者に対して、いかにインコースを攻められるかだと思います。インコースを攻めることが出来なければ厳しい戦いになる」
打者の傾向を観察しきった佐藤の好リード。
実際、大西―佐藤大のバッテリーはインコースを使った。
だが、ただインコースを一辺倒に使った訳ではなく、1試合トータルで考えた佐藤大のきめ細やかなリードは、この試合において重要な鍵を握っていた。
試合は、1回表、秀岳館の1番打者・松尾大河の右中間三塁打で幕を開けた。「僕が1番に入ってフルスイングすることで、秀岳館の怖さを印象付けたい」と松尾が語った通りの痛烈な三塁打。しかし、2番の原田拓実が四球の後に盗塁死。さらには、3番・木本凌雅のところで捕手の佐藤大がはじくのを見て、三走の松尾が本塁を狙ったが憤死。平川監督が「1点覚悟だった」とさえ振り返った窮地を切り抜けた。
佐藤大が本領を発揮したのは2回からだ。2、3回を連続3者凡退。試合前の平川監督の分析通りに巧みにリードした。
佐藤大はこう説明する。
「相手打線は軸足をライン寄りに半足分寄せていた。前の足はラインにかぶせて、アウトコースを狙ってきました。だから、相手打者の身体を起こす意味で、インコースを使いました。その上で外のカットボールを見せていく投球の幅を作ることができました」