野球善哉BACK NUMBER
関東から左腕3人が再び甲子園に揃う。
木更津総合、常総学院、花咲徳栄。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/08/04 10:00
常総学院の鈴木昭汰は球速はさほどではないが、球種やマウンド捌きに知性がある。
力投派の早川、ビッグマウスの鈴木。
そして年をまたいだ今春のセンバツにも、3人がそろって出場を果たしている。
そのセンバツでは、早川だけが初戦を突破して、さらにベスト8に進出。鈴木、高橋は1回戦で敗退。しかし早川も、準々決勝で1球に泣き敗戦。それぞれが課題を持ち帰って、夏への戦いの準備を整えてきた。
同じ左腕といえど、それぞれの投球スタイルも、性格も異なっている。
早川は、球の出所が見えにくいフォームからのスピンがのったボールが魅力だ。球速表示以上にストレートが切れ、スライダー、チェンジアップと球種も多彩。力投派でもあり、打者に向かって行く強気な性格でインコースを突く。連戦連投も厭わず、泣き言を言わずにマウンドに立っていられる。
鈴木は楽天の松井裕樹が目標と言うように、タテに鋭く変化するスライダーが持ち味。自由奔放なプレースタイルで、とにかく腕の振りが魅力なピッチャーだ。中学時代はU-15日本代表に入っていたほどの逸材で、ビッグマウスとしても知られる。
「分かっていても打てないスライダーを投げたい。常総学院史上最高のエースになりたい」
プライドも高く、ボール同様に言葉にも勢いがある。
高橋のフォークはストレートと見分けがつかない絶品。
一方、高橋は2人とは真逆の性格だ。記者の数に反比例して声が小さくなる。多くを語ることはなく、ボソボソっと話すにとどめる。鈴木がビッグマウスなのに対して、大きなことは決して言わない。ピッチングスタイルも左投手特有のインコースを武器とはせず、アウトローに決まるストレートを持ち味にしている。変化球はスライダーとフォーク。特にフォークは、ストレートと混ぜられると打者には判断がつかない絶品の球種だ。昨夏の甲子園では優勝した東海大相模を前に好投した。「甲子園が自分の球を成長させてくれた」と昨夏は話していたが、この夏の千葉大会優勝を決めた後は「去年のように、成長できたらいい」と冷静に大舞台を見据えている。
奇しくも、3人とも甲子園出場は今大会で3回目。昨春のセンバツには、早川、鈴木が出場し、高橋はいなかったが、夏は高橋だけが出場した。昨秋の関東大会で3人が一堂に会し、センバツを経てこの夏、3人が甲子園へと帰ってくるというわけである。