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ホテルの照明からベッドシーツまで。
手倉森誠監督の精密なブラジル視察。
posted2016/08/01 11:20
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
AFLO
キーワードは「過酷を覚悟せよ」である。
「今回の五輪はハードだと思う。ピッチ内のうまさを持っているだけで、戦える大会じゃない。人間としての精神力が、絶対に必要な大会だ」
5月のトゥーロン国際大会後に、リオ五輪代表の手倉森誠監督はフランスからブラジルへ視察に向かった。事前キャンプ地のアラカジュ、グループリーグの初戦と第2戦の舞台となるマナウス、同第3戦が行われるサルバドールを辿った。
「マナウスで泊まるホテルは廊下の照明がセンサー式で、一見すると暗い。廊下がものすごく長くて、忘れ物をしたら10分時間をロスする。湿度が高いので洗濯物が乾きにくい、ベッドのシーツがちょっと湿っぽい。ここではこうなる、という話が、ピッチ外についてもできる」
2014年のブラジルW杯で、選手たちは宿泊先のベッドのシーツに神経を尖らせていた。生乾きのような匂いが、居心地を悪くした。上質なホテルが用意される国際大会でも、こうしたことが起こることをあらかじめ知っておくのは、些細なことのようで重要だ。ストレスの要因を、取り除くことにつながる。
「あらかじめ視察をしたので、まずは指揮官として自分がくたばらなくて済む。自分はキツいとは言わないし、選手やスタッフに、どれぐらい大変なのかを話せる。チームのなかにひとりでもネガティブな気持ちの人間がいたら、疲労感が全体に伝染してしまうけれど、前もってイメージできれば苦にならないから」
ホテルから練習場までは1時間、ならば……?
マナウスからサルバドールへの移動は、6時間を見込んでいる。さらに、サルバドールのホテルから練習場への移動は、1時間前後を想定する。
「それだけ時間をかけて、移動当日に練習場でリカバリーするのか? 普通に考えたら、違う方法にしたほうがいい。それなら、ホテルの周りでやることもイメージできる。準々決勝以降についても、選手の疲労度と移動を加味しながらリカバリーとトレーニングをどうするかを見極めていく」