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メジャーで負け続けた男達の明暗。
ミケルソンは報われ、ガルシアは?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2016/07/10 07:00
プレー、そして人間性の両面で愛されてきたフィル・ミケルソン。彼のメジャー優勝を、多くのファンが喜んだ。
最後まで悲願が叶わない選手の方が多い。
そんな最後の悲願を抱いているとはいえ、ミケルソンはメジャーで5勝も挙げたのだから、彼は大いに「報われた」選手と言っても過言ではない。なぜなら、メジャー優勝を悲願に掲げ、その悲願が叶わないままの選手のほうが多いからだ。
スコットランドで大人気を誇っていた“モンティ”ことコリン・モンゴメリーは、かつてメジャー優勝に一体どれほど王手をかけ、そして惜敗に終わったことだろう。
ストレートな物言いや真っ赤になって激昂する直情型の性格がアメリカ人ギャラリーの野次の餌食にされ、大事な優勝争いの真っ只中に野次で妨害されたこともあった。
2002年全米オープンでは「Be Nice To Monty(モンティに優しくしよう)」と書かれた大量のバッジが会場内で無料配布されたほどだった。が、それでもやっぱり勝てず、ついにメジャー優勝は悲願のまま、彼はシニアの世界へ去っていった。
ナイスガイになったセルヒオ・ガルシアは……?
2007年の全英オープンでは「スペインが生んだ天才少年」、「神の子」と呼ばれながらメジャーでは未勝利のセルヒオ・ガルシアが初日から独走態勢。しかし最後の最後にパドレイグ・ハリントンに敗れ、地元紙には「ナイスガイが勝った」と書き立てられた。その意味は「ガルシアは日頃から行いが悪いから負けた」ということ。
実を言えば、それは実際その通りで、試合中にルールの裁定に不満を覚えるとルール委員に靴を投げつけ、パットの不調に腹を立ててはカップの中に唾を吐く始末。米メディアも、そんなガルシアは負けて当然という論調で記事を書いた。ガルシアの人気は下がる一方で、グリップを10回以上も握り直さないとスイングを始動できない“奇病”に陥ったときなどは、アメリカ人ギャラリーからの野次の絶好の餌食と化した。
ガルシアは「ゴルフに何の魅力もやる気も感じない」と言って、大スランプに陥り、母国へ帰っていった。だが、成績がすっかり低迷しても応援や支援をし続けてくれた母国の人々のおかげで立ち直り、ツアーに復帰。
それからのガルシアは別人のようにナイスガイになっている。ツアーで年下の選手や外国人選手にはとりわけ優しく、「リオ五輪にはスペイン代表として出場したい」と愛国心も燃やしている。
メジャーは「ナイスガイが勝つ」のだとしたら、そろそろガルシアが勝ってもいいのではないか。最近では、そんなふうに感じている人も多いはずだ。