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メジャーで負け続けた男達の明暗。
ミケルソンは報われ、ガルシアは?
posted2016/07/10 07:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
メジャー優勝が悲願――。このフレーズを聞いて、まず頭に浮かぶ名前はフィル・ミケルソンだ。
えっ? ミケルソンはすでにメジャーで5勝も挙げているではないか? そう、その通り。だが、彼がメジャーに勝てそうで勝てず、「メジャータイトルなきグッドプレーヤー」という屈辱的な称号を冠されていた期間は10年以上にわたり、彼の負けっぷりはいつも印象的で、だから彼がメジャーチャンプになった今でも、かつての彼の数々の惜敗シーンが頭から離れない。
大学時代に米ツアーで初優勝。大学卒業と同時にプロに転向し、米ツアー選手になったのは1992年。以来、ミケルソンはメジャーでたびたび上位に顔を出したが、手に汗握る激しい優勝争いを初めて演じたのは、パインハーストで開かれた1999年全米オープンだった。華やかな出で立ちで当時のスーパースターだったペイン・スチュワート(故人)と競り合って敗北。あれがミケルソンのメジャー惜敗の歴史の始まりだった。
2002年の全米オープンではタイガー・ウッズとのライバル対決となったが、このときも2位に終わり、べスページのギャラリーが大合唱してくれたハッピーバースデーの歌声だけが胸に残った。
メジャー4大会で、優勝争いに絡んだ末に勝利を逃すこと16回。開幕前の会見で米メディアから「今回は勝てるか?」と問われるたびに、ミケルソンは「今度こそ勝つ」と豪語し、「2本のドライバーをバッグに入れて使い分ける」、「ロングアイアンのロフトを0.5度だけ被せながら打つ」等々、秘策というより奇策を語っては苦笑され、勝利宣言しては惜敗して、「again」と書き立てられた。
2010年マスターズで妻を抱きしめる姿に世界が涙。
そんな彼がついにメジャー優勝を果たしたのは2004年マスターズ。1つ勝ったら次々に勝った。2005年の全米プロを制し、その翌年のマスターズで再び勝利。
愛妻と実母が同時に乳がんにおかされ、辛い日々を過ごした翌年には2010年マスターズを制し、18番グリーン奥で弱々しい姿で待っていた妻を抱きしめる姿に、世界中が涙した。さらには、相性が悪いと言われ続けた全英オープンを2013年に43歳で制し、メジャー5勝を達成。
それでもなお「一番勝ちたい」と願い続けている全米オープンだけは未勝利だ。'99年大会を皮切りに2位に甘んじたこと、すでに6回。勝てば生涯グランドスラム達成となるが、果たして彼の悲願は叶うのか。
そう、彼は今でもやっぱり、悲願のヒーローなのだ。