ゴルフPRESSBACK NUMBER
メジャーで負け続けた男達の明暗。
ミケルソンは報われ、ガルシアは?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2016/07/10 07:00
プレー、そして人間性の両面で愛されてきたフィル・ミケルソン。彼のメジャー優勝を、多くのファンが喜んだ。
惜敗を重ねた後にブレイクしたダスティン・ジョンソン。
ガルシアとどこか似た状況にあったのが、先月の全米オープンで優勝する以前のダスティン・ジョンソンだった。
ぺブルビーチで開催された2010年全米オープンでは首位で最終日を迎えながら「82」を叩いて8位に終わったジョンソン。
同じ年、2カ月後の全米プロでは72ホール目の第2打を打つ際、バンカー内であることを認識できず、ソールして打って2打罰を科せられ、戦うはずだったプレーオフを戦えずして敗北した。
2014年の全米オープンは4位。昨年の全米オープンでは72ホール目にわずか1メートルを外して3パットし、目前の勝利をジョーダン・スピースに差し出す形で敗北した。
惜敗のショックは多大だっただろうが、それに加えてジョンソンがショックを受けたのは「メンタルが弱い」、「ルールを知らない」、「不注意」等々、敗北の理由を米メディアからネガティブに指摘され続けたこと。挙句に2014年夏からツアーを長期欠場したが、「個人的な事情」とだけ伝えて理由をきちんと明かさなかったため、ジョンソンのイメージはどんどんグレー化していった。
しかし、メジャー優勝を悲願に掲げるジョンソンの想いは強く、彼の豪快なドライバーショットに魅力を感じるファンの存在も大きかった。
オークモントで開かれた今年の全米オープンでは最終日にボールが「動いた」か「動かした」かの判断が分かれ、1打罰が保留されたままプレーするという珍事に遭遇したが、そんな不運を黙って乗り越え、勝利したジョンソンの株は今、急上昇中だ。
辛そうな、壊れそうな彼らがヒーローに一番近い。
悲願のメジャー優勝を果たしたら、次なる世界選手権シリーズのブリヂストン招待でも優勝し、あっという間に世界ナンバー2へ、米国人選手のトップへ。
その姿は、昨年7月の全英オープンで72ホール目にバーディパットがわずかにカップに届かず、悔し涙を流したジェイソン・デイが、翌月の全米プロを制した途端、ビッグ大会を次々に制し、瞬く間に世界一へ上り詰めていった様子とよく似ている。
勝てそうで勝てない悲願のヒーローたちは、そのときは辛そうで、壊れそうで、つぶれてしまいそうに見えるけれど、勝利に何度も何度も迫っている彼らは、本物のヒーローに一番近い位置に立っている。
1つ勝てば、そこで得た自信が悲願から「悲」という文字を取り払い、2つ、3つと勝利を重ね、大きな「願」が叶うはず。
勝てそうで勝てない悲願のストーリーは、世界中にまだまだ山ほど隠れている。来週は全英オープン。悲願のヒーローが本物のヒーローへ変わる姿をロイヤル・トゥルーンで見ることはできるだろうか――。