スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペインとデルボスケ、黄金の8年。
眩しすぎた全盛期とその後遺症。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2016/07/06 17:00
スペインの黄金時代は、8年前のEURO2008の決勝T初戦、PKで勝利したイタリア戦で始まり、今大会のイタリア戦で終止符が打たれた。
デルボスケ「我々の時代が終わることはない」
そして今年、イタリアに敗れた後のミックスゾーンで、ピケは「今のチームはワールドカップやEUROを優勝した頃のレベルにはない」と言っていた。彼が言う通り、今大会のスペインはグルジアやチェコ相手にも、引いて守られたら崩せないレベルにまで遅攻の質が落ちていたのだ。それではイタリアの堅守など破れるわけがない。
もはやクラブレベルだけでなく、ナショナルチームにおいても個々のうまさだけで勝つことは難しくなってきた。ティキタカスタイルをベースとしながらも、ドイツやイタリアのように攻守に組織力を高め、個々のインテンシティや運動量を増やさないことには、今後スペインがタイトルを奪還するのは難しいかもしれない。
「スペインサッカー界には優秀なクラブと優秀な育成がある。我々の時代が終わることはない」
イタリア戦後の会見でデルボスケが言っていた通り、スペインには続々と優秀な若手が育ってきている。成績の上下動はあるにせよ、今後もしばらくは人材不足に悩むことはないだろう。
後任監督はカウンターサッカーが専門だが……。
重要なのは、その豊富な人材をどう生かすかだ。今後はティキタカスタイルを継続できるタレントを確保したうえで、かつ攻守にハードワークできるコケやサウールのような若手を中心に据え、より組織的に、アグレッシブに戦うチームを作る必要がある。
その点、後任監督に現時点で名前が挙がっている最有力候補のホアキン・カパロスは、若手を鍛え、チームにハードワークの精神を植え付けるという意味では期待できる。一方、攻撃面でスター選手たちのタレントを生かせるようなチーム作りができるかといえば、中小クラブでカウンターサッカーをベースに戦ってきた彼の専門外となる。
とはいえ、8年のデルボスケ体制でマンネリ化した現状を打破するためには、彼くらいエネルギッシュな熱血漢に任せてみるのも面白いかもしれない。この4年間、ラ・ロハは全盛期のイメージを抱いたままプレーし続けてきた結果、知らず知らずのうちにチーム力を衰退させてきた。
そんな流れを一変させるためにも、ここらへんで一度ドラスティックな変化を加えてみる価値はあるのではないだろうか。