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阪神の左腕、岩貞祐太がついに変貌!
きっかけは筒香嘉智への「その1球」。

posted2016/05/04 10:00

 
阪神の左腕、岩貞祐太がついに変貌!きっかけは筒香嘉智への「その1球」。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

4月2日のDeNA戦で勝利した時の岩貞。ピンチを三振で切り抜け……吠えた!

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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NIKKAN SPORTS

 なぜか、広島でよく行くつけ麺屋に飾られた色紙を思い出した。マラソンランナーだった大学の同期がしたためたものだ。几帳面な字で「大変なのは大きく変わること」と綴っていた。その歩みの一端を知ればこそ、それでも、トップに立った男の重みがにじむ。

 変わろうともがき、成功も挫折も味わうのはプロ野球界でも同じだ。だから、一気に世に飛び出ようとする若者に興味をそそられる。

 プロ3年目の春がやって来た。

 スローガンの「超変革」を掲げる金本阪神で、もっとも鮮やかな変貌を遂げつつあるのが、過去2年で2勝にとどまる岩貞祐太だろう。

 スポーツ新聞には連日、投打の個人成績が掲載される。セ・リーグの投手部門を見てみよう。巨人・菅野、DeNA・井納、広島・黒田ら常連のなかに、見慣れない「岩貞」の名前が常に上位にランクイン。4月終了時で防御率0.79は2位。奪三振数46個にいたっては堂々の1位に立っていた。

 熊本・必由館高では甲子園に行けなかった。神奈川大学リーグの横浜商大でプレーし、中央球界とは無縁だった。'13年のドラフトも大瀬良大地(広島)、柿田裕太(DeNA)を競合で外した末のドラフト1位。参考までに、左腕の過去2年間の成績を記しておく。

 '14年 6試合 1勝4敗 防御率4.60
 '15年 5試合 1勝1敗 防御率4.35

 チーム内では「もともと腕の振りにはいいものがあった」と評価されていた。球威はあるのに制球難で自滅する。そんな悪癖はすっかり消え、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いだ。なぜ、彼は大きく変われたのか。

絶体絶命の局面でも焦らないのは成長の証。

 4月29日、甲子園でのDeNA戦でも成長ぶりを示した。

 陽川尚将の本塁打で逆転して、1点リードに転じた直後の6回。先頭ロペスに不用意な初球を打たれ、右中間三塁打を許す。昨季までなら一気に崩れてもおかしくない。だが、井手を浅い中飛に抑えると、倉本と飛雄馬を連続で空振り三振。絶体絶命の同点機をしのいだ。

 岩貞は振り返る。

「1点目が僕のつまらないミス(ベースカバーの踏み損ね)からだったのに、ひっくり返してもらって、1回を3人でパパンと抑えて勢いをつけたいと思っていたら、初球に打たれてしまった。フルで飛ばして、抑えよう、3つ三振を取るくらいの気持ちでした」

 一方で、戦況を見渡す冷静さもあった。ピンチを迎え、岩貞はこんな想定もしていた。「1個目は三振で取って、2個目、3個目はカウントが悪ければ歩かせてもいい」。性急に結果を欲しがらない。塁は2つ空いている。球数を要しても、じっくり攻めればいい──。そんな心のゆとりが芽生えたのは、自分を信じられるようになったからだろう。

【次ページ】 筒香に投じた「その1球が自信になりました」。

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