RALLYスペシャルBACK NUMBER
ダカールラリーで部門3連覇達成した、
ハンドボール出身監督の決断。
posted2016/03/24 18:00
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph by
TOYOTA AUTO BODY
モータースポーツはチームスポーツである。そのことを改めて感じさせられたのが、今年、ダカールラリー市販車部門3連覇を達成した、チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(トヨタ車体)だ。
1月8日、衛星電話から監督の角谷裕司のもとに突然第一報が飛びこんだ。1月3日に実質スタートを切った2016年ダカールラリーで、角谷の指揮下で出走した343号車はニコラ・ジボンのドライビング、ジャン・ピエール・ギャルサンのナビゲーションで、市販車部門の首位を快調に走っていた。ところが、その343号車から突然走行不能に陥ったとの連絡が入ったのだ。丘を越えた先にあった大きな溝に突っ込み車体前部を破損したためだった。角谷は動転した。
救援に行くべきか、それとも……。
現場は角谷がいたビバークから何百kmも離れた砂漠の中で、通信事情も芳しくない。音声はぶつぶつと途切れ、事態を正確につかめない角谷は焦った。できる限り速く状況を理解し、戦略を組み立て直さなければならない。角谷はフランス語の通訳を使って、なんとか現地と連絡を取ろうと電話をかけ続けさせながら考えた。
チームはエースの343号車と、それをサポートする役目の342号車の2台体制だ。342号車には今年初めてドライバーに起用した社員ドライバー、三浦昂がナビゲーターのローラン・リシトロイシターと乗っている。彼らの役割は、343号車が優勝を狙えるようにサポートしながら完走することだ。
本来ならば後から追いつく342号車が、コース上に立ち往生した343号車の救援に向かうべき場面だ。しかしもし343号車の損傷が激しく、救援が無駄になれば、タイムロスを強いられる342号車の順位をその分下げてしまうことになる。343号車をあきらめて342号車に競技の続行を命じ、少しでも上位で完走させるべきか、342号車の救援に向かわせるべきか。
角谷は情報が欲しかった。343号車は今、どんな状態で停止しているのか。全14日間、13ステージからなるラリーはまだ6日目のステージ6、序盤にある。ここで自分はどう決断すべきなのか――。