Jをめぐる冒険BACK NUMBER
9得点よりもスタイルの片鱗が衝撃!
城福体制のFC東京が覆した懐疑論。
posted2016/02/10 18:10
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
ややこわばって見えた表情が時間の経過とともに少しずつほぐれていく。
終盤に河野広貴がゴールを決めたとき、そして途中交代した水沼宏太を握手で迎え入れたときには、ほんの数秒だったが、はっきりと笑顔を見せた。
今季からFC東京の指揮を執る城福浩監督のことである。
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「今シーズンで最も重要な試合になる」
チョンブリFC(タイ)との2月9日のACLプレーオフを、城福監督はそう位置づけていた。
FC東京だけでなく、Jリーグ全クラブの中でも今シーズンで最も早い公式戦であり、負ければACLに出場できなくなる大事なゲーム。しかも、チームの始動からわずか4週間、本来ならキャンプでチーム作りを進めている時期に迎えたゲームである。
そしてもうひとつ、この試合を「最も重要」と位置づける理由があるとするなら、自身の就任意義を示さなければならない、ということではないだろうか。
城福監督はFC東京にとって、ただの新監督ではない。今回が2度目の就任であり、1度目は成績不振を理由に'10年9月に解任された。しかも、昨シーズン年間4位を達成した前任者マッシモ・フィッカデンティ監督との契約延長が見送られたうえでの復帰である。これでもし初戦で敗れようものなら、城福監督の再任に対して懐疑的な人たちに説明がつかなくなってしまう。
9-0という結果以上に、スタイルへの手応え。
そんな状況で迎えたチョンブリFC戦は、FC東京にとっても、城福監督にとっても理想的な内容で、9-0と大勝した。
最も欲しかった勝利を手にしただけでなく、水沼、阿部拓馬、ハ・デソンといった新戦力が早くもチームにフィットしていることを示し、多彩な攻撃パターンも披露。そして今シーズンに掲げる「アクションフットボール」の一端も示すことができた。
城福監督によって今シーズンのコンセプトが説明されたのは、1月14日に行なわれた新体制発表会でのことだった。
「『アクションフットボール』とは、攻撃でも守備でも主体性と選択肢を持ちながら、勇気を持って動くこと。守備は9割がリアクションと言えるが、バックパスを狙いに行ったり、型でハメて奪いに行けば、アクションになる。反対に、攻撃はほとんどがアクションだが、相手の良い守備に遭ってバックパスして蹴らざるを得なかったり、はね返されるのが分かっていて長いクロスを入れたりするのは、私の定義ではリアクションになる」