猛牛のささやきBACK NUMBER
糸井、小谷野という「異次元」体験。
オリックス流、若手を伸ばす方法論。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2016/01/26 10:30
2013年12月の新人入団会見にて。上段中央が吉田雄人、その右に奥浪鏡、中段左が若月健矢。
プロは“クール”じゃいられない。
一方、吉田雄人にとって、昨年の特に後半は、意識面もプレー面も、大きな変革の時だった。
北照高からオリックスに入団したばかりの頃の吉田は、クールで、どこか一歩引いて周りを見ている印象があった。
奥浪が、「同級生の中で一軍で最初に結果を残すのは自分。そこだけは譲りたくない」とライバル心をむき出しにするのとは対照的で、吉田はこんな風に語っていた。
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「奥浪みたいに、負けず嫌いをああやって表に出せるのは、自分にはない能力なので、すごいなーとは思うんですけど、正直、あんまりそういう人は得意じゃないので……自分ではあまりしないようにしています。僕は草食系なのかもしれないです(笑)」
その吉田に、昨シーズン後、一軍でチャンスを掴んだ若月について尋ねると、こう答えた。
「もちろん刺激になっています。ポジションは違いますけど、やっぱり同級生には負けたくないので」
負けん気が素直に表に出た。「変わりましたね」と聞くと、顔をくしゃっと崩して言った。
「これからは泥臭くいこうかなーって」
なりふり構わず、泥臭く。それはプレーにも表れた。秋季キャンプでは打撃フォームを変え、これまで長く持っていたバットを、短く持つことにした。
「バットを短く持つのってしょぼいと思ってた」
「欲を捨てて、単打を狙うという感じです。慶彦さん(高橋慶彦打撃コーチ)に勧められて。ボールはちゃんと見えているのに、捉えきれていないというのは自分でも感じていたので、短く持つだけでも違うんじゃないかなと。やっぱりコンパクトに、シャープに振れますから。単打でもヒットが増えれば、盗塁できたり足をいかせるので」
最初は、「こんなに短く持つのか――」と戸惑ったと苦笑する。
「バットを短く持つのってちょっとしょぼいと思ってたので。でも結果が出るならそれが一番。まずヒットを打てなければ始まらないですから。カッコとかじゃなく、結果を残せることを最優先にやっていきたい。そうじゃないと、もう終わっちゃいますから」
オフの期間はパーソナルトレーナーと契約しムダのない体の使い方を学ぶなど、肉体の変革にも取り組み、3年目の開花の準備を整えてきた。
昨季とは打って変わって、他チームからの補強をほとんどしなかった今季のオリックス。チーム浮上の鍵を握るのは、イキのいい若手選手の台頭だ。