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引退後はブンデスでフロント入り?
長谷部がドイツで評価される理由。
posted2016/01/16 10:30
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
AFLO
「他の選手のインタビューを見て、ドイツではどんな姿勢や発言が受け入れられるかをずっと考えてきました」
長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)
選手としてだけでなく、グローバル人材としても評価されている証だった。
1月5日、ビルト紙のインタビューで、フランクフルトのスポーツディレクター、ブルーノ・ヒュブナーはこう語った。
「長谷部誠と契約延長の話し合いを始めている。彼には特別な価値があり、引退後に私たちのクラブであるポジションを用意することを考えている。日本市場は私たちにとって重要。彼は日本でベッケンバウアーのような存在。引退後、長いスパンで共に働くことを想像している」
フランクフルトと長谷部の契約は今年6月までだが、レギュラーとして活躍しており、クラブとしては契約延長を希望している。そこで契約の中に、引退後の役職も盛り込もうと考えているのだ。
なぜ長谷部はドイツでも信頼されるのか?
これまで欧州4大リーグで選手として活躍したあと、クラブから声がかかって役職を得た日本人はいなかった。長谷部はその第1号になるかもしれない。
古巣のヴォルフスブルクも、この日本代表キャプテンをクラブスタッフとして狙っていると言われている。なぜ長谷部はドイツの地でも信頼されるのだろうか。
アブダビで行われたフランクフルトの合宿を訪れ、練習後に質問をぶつけると、「それはブルーノさん本人に聞かないと真意はわからないですね」と前置きしたうえでこう話した。
「やっぱり人間関係というのは一方通行よりも、相思相愛の方がいいと思うんですよ。自分がフランクフルトから何か受け取るものがあるかもしれないし、逆に向こうも僕とつながっておくことで何か得られることがあるかもしれない。まだそこまで具体的な話はしていないけど、そうやって言ってもらえるのはありがたい。まだ1年半しかいないのにね」
今、ドイツでプレーする日本人選手の中で、最もドイツ語が堪能なのは長谷部だろう。積極的に若手に声をかけ、ホテルとピッチの往復でもスタッフと話し込む。練習前に長谷部がベンチでスパイクを履き替えていると、昨季ブンデスリーガ得点王のマイアーが近づいて話しに来た。ちょっとしたシーンから、チームのど真ん中にいることが伝わってくる。