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豪華な経歴と「本物」の負けず嫌い。
バドミントン界のエース・桃田賢斗。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2015/12/12 10:40
昨年の決勝で敗れた佐々木翔(トナミ運輸)をストレートで破っての優勝。フィジカル面の成長を見せた。
「自分の強みは、負けず嫌いであることです」
香川県に生まれ育った桃田は、進学先として福島県の富岡町立富岡第一中学校を選ぶ。県立富岡高校との中高一貫でバドミントンに励む環境があったからだ。
「自分が強くなれる環境だということで選びました」
練習の中では、高校生と対戦する機会も珍しくなかった。富岡高校の大堀均監督は、当時を振り返り、こう話してくれたことがある。
「負けず嫌いでね、もっと試合をしたいという姿勢でした」
桃田も以前の取材で、自身をこう語った。
「自分の強みは、負けず嫌いであることです」
負けず嫌いの性格から、「じゃあどうしたら勝てるだろう」と考えた。
パワーやスピードなどでは対抗できない。技術しかない。
相手が格上でも負けたら勝つ方法を考え抜く。
以来、「格上」の相手を倒すために、技術を磨いてきた。それが今日に結びついている。
富岡第一中学を選んだ動機が物語るように、自分を伸ばしたいという意識も強い。NTT東日本へと進んだのも、第一人者・田児賢一がいたのが理由の一つだ。
「日本一の選手と練習するのが日本一の練習になる。いろいろなことを盗みたいと思って入りました」
負けず嫌いです、と語る選手はたくさんいる。ほとんどかもしれない。でも、その度合いはいろいろだ。
桃田は、本当の負けず嫌いだ。だから、相手が高校生であろうと、負けてただ悔しがるところにとどまらず、本気で勝つ方法を考え抜き、模索し、答えを導き出した。
自分に適した、上達できる環境を選んできた。
富岡高校に進学後、原発事故で学校は猪苗代町に移転を余儀なくされた。先行きへの不安を抱えたこともあった。8面取れる体育館での練習環境から、町の複数の体育館をまわっての練習の日々となった。でも。
「町の人たちがとてもあたたかく迎えてくれましたし、支えてくれた人たちに結果で恩返ししていきたいと思うようになりました」
そんな思いもまた、強みかもしれない。