詳説日本野球研究BACK NUMBER
日本人野手のMLB成績は十分に成功?
安打500本を一つの基準にしてみると。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/12/12 10:30
ソフトバンクでも侍ジャパンでも中心選手の松田宣浩。メジャーでそのプレーが見られる日は来るのか。
日本にも残るルカデロ精神。
ルカデロのスカウティング能力だけではない。学校のグラウンドに壁を作ることの重要性を随所で説いていることが、この本の価値を一層高めている。曰く、「(壁を使えば)たった一時間で五○回バットを振り、一五○球のゴロをさばける。子供たちは一○秒ごとに壁から跳ね返ってくるボールを捕ることによって、あっというまに上達するから、野球以外のものには目を向けなくなるだろう」。
2014年にNPB(日本野球機構)は「プロ野球80周年記念事業・未来の侍プロジェクト」として「ベース・ウォール(BASE WALL)」を12基作り、12球団のフランチャイズ地域の小学校などに1基ずつ寄贈している。ルカデロの精神は日本でもきちんと受け継がれているのである。
ちなみに『スカウト』の翻訳者は富永和子という女性で、彼女の夫は私が子供時代夢中になった東映フライヤーズ(現日本ハムファイターズ)の選手で、日本一になった'62(昭和37)年にリリーフ投手として8勝6敗の成績を残している富永格郎である。
「日本人野手はメジャーで通用しない」は本当か。
長々とメジャーリーグ本のうんちくを語ってしまったが、『シューレス・ジョー』や『スカウト』が素晴らしいのは、メジャーリーガーになることがいかに大変かという前提がしっかり描かれているからである。
この前提が日本では軽視されているように思えて仕方がない。とくに嫌なのは「日本人野手はメジャーリーグで通用しない」という意見。
私はプロ野球選手の成功/不成功を野手なら通算500安打、1000試合出場、投手なら50勝(1セーブ=0.5勝)、300試合登板を目安にしている。日本人選手のメジャーでの成功/不成功も同じ基準で見ると、イチロー(15年までメジャー通算2935安打)、松井秀喜(1253安打)は別格として、松井稼頭央(615安打)、青木宣親(563安打)は完全な成功選手である。
短い実働年数で500安打に迫っている福留孝介(5年・498安打)、井口資仁(4年・494安打)、城島健司(4年・431安打)、岩村明憲(4年・413安打)も私にとっては成功選手である。