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日本人野手のMLB成績は十分に成功?
安打500本を一つの基準にしてみると。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2015/12/12 10:30

日本人野手のMLB成績は十分に成功?安打500本を一つの基準にしてみると。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

ソフトバンクでも侍ジャパンでも中心選手の松田宣浩。メジャーでそのプレーが見られる日は来るのか。

メジャーで200安打の助っ人を大きく扱うマスコミ。

 日本のプロ野球からメジャーに挑戦した野手は'15年まで合計15人いて、そのうち私が考える成功選手は8人。成功率.533という数字と、『シューレス・ジョー』のエディ・シズンズと『スカウト』のトニー・ルカデロの話をくらべてほしい。「通用しない」と言われる日本人野手の頑張りがひしひしと伝わってこないだろうか。

 通算500安打を成功選手の範疇に入れるか入れないかの意見は様々だが、日本のマスコミは肌の色が異なる元メジャーリーガーが来日すると、「通算200安打」くらいで大きく扱う。外国人の200安打と日本人メジャーの200安打の温度差、これはどういう部分から生まれているのだろうか。

松田宣浩くらいの選手は「ゴロゴロいる」!?

 さて、今年もメジャー挑戦が取り沙汰されている野手がいる。ソフトバンクの松田宣浩三塁手だ。評論家の張本勲氏はテレビ番組で「アメリカに(松田と)同じような選手はゴロゴロいる」と発言、世間もおおむね納得している様子だ。

 張本氏が日本人選手のメジャー挑戦が浮上するたびに否定的になるのは、日本球界の空洞化を不安視しているのと、その選手の通算記録がメジャーリーガーをめざすことによって何割か損なわれる、と思うからではないのか。

 野茂英雄がメジャーに移籍する'95年の前と後とでは、プロ野球選手の意識は大きく変化した。'95年以前はプロ野球名球会が入会基準にした「投手は200勝、野手は2000安打」が名誉の基準になったが、今の一流選手の多くは通算記録が何割か損なわれてもメジャーでプレーするメリットのほうを優先する。

 引退後のプロ野球中継の解説者として、あるいは日本球団の監督、コーチとしてファンや選手を納得させようと話をするとき、その中に「メジャー」や「グローバル」というワードがあるかないかで聴く側の姿勢は大きく変わる。実際、私は田口壮、吉井理人、石井一久氏らの話を聞くのが楽しい。日本人の野球観はこの20年間で大きく変わったという認識を持つことが私たちには必要だと思う。

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