スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
全日本を東洋が制し、箱根は混戦?
本命はなお青学も、神野次第では……。
posted2015/11/09 10:30
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kyodo News
全日本大学駅伝。
初優勝を遂げた東洋大、酒井俊幸監督の優勝インタビューは予想していない展開になった。
「柏原、市川、設楽、彼らの悔しさが……」
そこから先は聞き取れなかった。酒井監督は涙をこらえきれなかった。
距離が延びてよし。これが東洋大の特徴だ。距離適性は向いているはずなのに、初優勝とは意外である。
今回、東洋大の勝因はふたつある。
序盤で主導権を握ったこと。
そして、中盤以降のつなぎ区間と、ラストで青山学院大を突き放したこと。
3区までにリード、そして勝負の4区……。
昨今の駅伝のトレンドを考えたとき、序盤で波に乗るためには、俗にいう「エース区間」で戦える選手が3枚は必要だ。
今季でいえば青学大には一色恭志、久保田和真、小椋裕介の3枚がいて充実。本命に推される理由はここにあった。
しかし、東洋大のエースにも力がある。1区を走った服部勇馬、2区を担当した弾馬の兄弟はふたりとも区間賞を獲得し、主導権を握ることが出来た。
大きかったのは最短区間の3区で、ここで東洋大は口町亮が青学大の田村和希に1秒差で区間賞を取り、差を縮めさせなかった。
3区までに作った36秒の差が、この後の展開に大きく影響した。
勝敗の分岐点は4区だった。
追う青山学院大は、原晋監督が勝負どころと睨んだか、駅伝に強い久保田をこの区間に配置した。30秒以上の差を軽快に追い上げ、あっという間に東洋大の櫻岡駿を捉えた。走りに躍動感があり、「これは一気に久保田が逆転だな」と予測した。
しかし、そこから予想していなかった櫻岡の粘りが「炸裂」する。