フットボール“新語録”BACK NUMBER
良いポゼッションにはコツがある!
風間八宏が説明する2つのポイント。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2015/09/26 10:30
風間八宏監督は独自の戦術理論を展開する“智将”として知られ、選手に自分で考えさせる指導法を取る。
「前のうまいやつにボールを渡す」
まず挙げたのが、「うまいやつにボールを渡しているか」ということだった。
「バルセロナを見ても、バイエルンを見ても、DFラインのボール回しはものすごくシンプルだ。そこから一発のパスを狙うことはほとんどない。どんどんボールを動かして、前のうまい選手に渡す。そうするとボールが止まらないので、前の選手も動き出しやすい」
「それに対して、後方の選手が一発を狙ってパスコースを探し、ボールを持ちすぎてしまうと、相手の守備が整う時間ができてしまう。その結果、前にいる選手の足も止まってしまう。後ろにいる選手がシンプルにプレーするのは、ものすごく大事なことだ」
チームとしてだけでなく、誰がどれくらい持ったか、という細部まで見ないと、ポゼッションの真の価値はわからないということだ。いくらフンメルスがうまいと言っても、クロースやエジルが持つのとはやはり違う。
パスを受ける前に相手の視線を動かす。
次に挙げたのが「選手がパスを受ける前に走る距離」だ。
相手の組織を揺さぶるには、待ち構える敵の視線を動かさなければならない。死角が増えれば、そこを突くチャンスが生まれるからだ。そのためには一定以上の距離を走らなければならない。
「相手の目の前だけで動いていたら、視線は動かない。あくまで目安だが、3メートル動くより、6メートル動く方がいい。あとはそれをいかにしつこく繰り返せるか。パスが来なくても、もう1度動き直す。自分の体を操れなければ、敵を操ることもできない」
DFが気の利いたビルドアップをしているつもりでも、そこで時間を食ったら前線の選手が苦労してしまう。前線の選手は動いているつもりになっても、相手の視野を動かせていなければ効果は小さい。
まだまだポイントはたくさんあるだろうが、この2点を改善するだけで、「悪いポゼッション」はだいぶ改善されるはずである。
もしかしたら、このエッセンスはポゼッションの話に限らないかもしれない。日本サッカーの質をさらにもう一段階上げるためには、「~しているつもり」というプレーを減らしていかなければならない。