リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
代表戦でピケが浴びた非難の指笛。
政治的理由か、マドリーとの敵対か。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2015/09/22 10:40
スペイン代表で全てを手にしてきたピケにファンが非難の声を挙げるのはよほどの状況だ。
マドリーに対する攻撃的な発言の数々も。
もうひとつの理由はマドリーに対する彼の姿勢で、ピケ自身もこれが原因と考えている。
具体的には、今年6月の3冠祝勝会での毒舌。
満員のカンプノウでマイクを持ったピケは、集まったファンやチームのスタッフやクラブの役員にひとしきり感謝した後、「ありがとうケビン・ロルダン。君と共に全てが始まった」とやったのだ。
ケビン・ロルダンはコロンビアの歌手で、ピケが彼の名を通じて指したのは、ロルダンも出席した今年2月のクリスティアーノ・ロナウドの誕生日会である。実際、リーガのアトレティコ戦で4-0の惨敗を喫した夜に催されたこのパーティー以後マドリーは調子を崩し、3月のリーガは4戦して1勝2敗1分け。CLではシャルケ相手にも1試合を落とした。
また、8月のUEFAスーパーカップでもビデオ映像から拾われたピケのひとことはニュースになった。表彰式の後、ピッチ上でチームメイトにこんな言葉をかけていたからだ。
「さあ祝うぞ! マドリーの連中、くそったれ! 俺たちのビクトリーランを見てやがれ!」
いずれにせよ、タイトル獲得を祝う場でのピケのマドリー揶揄はいまに始まったことではないし、「バルサのピケ」に向けられるべき文句が「代表のピケ」に向けられるのもおかしな話だ。が、レオンやオビエドのマドリーファンにとって、代表の試合は表現の自由を行使する貴重な機会だったのだろう。
シャビとカシージャスはもういない。
ところで、今回の一件により代表の和を脅かす「バルサ対マドリー」が再び勃発する可能性が危惧されている。
火種になりそうなのは、ピケへの指笛について問われたマドリーのラモスの辛辣な批判だ。
「優勝したとき何をするかは人それぞれだが、俺の場合、思い浮かべるのは自分に関係している人たちだけ。嬉しくてちょっと行き過ぎちゃうヤツもいるのだろうけど、ピケの最近の行動は代表のためにはなっていない」
当のピケはというと、こうした状況下にあっても自分を曲げることはなく、記者会見の席で言い放っている。
「マドリーには常に負けてもらいたい。常にね」
モウリーニョがマドリーを指揮していた頃、互いに向けた両軍の熾烈な口撃からチームを守ったのはシャビとカシージャスの友情だったが、2人はもういない。
バルサの元スポーツディレクターで代表キャップ126という記録を持つスビサレタは、ラモスとピケが話し合えば「1分半で全て解決するだろう」と楽観的だが、どうなることやら。