球道雑記BACK NUMBER
ついに連敗をストップさせた西武。
'07年の苦境知る中村剛也らの威厳。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/08/06 12:10
この試合、ショートゴロでも全力で一塁へダッシュすることで、見事に安打をもぎ取っていた中村。勝負に対する意地を、若手に見せつけていた。
2007年当時と、あまりにも似ている今の西武。
そんな連敗が続いた8月1日、西武プリンスドームの試合終了直後、鳴り止まないホークスファンの歓喜の声とライオンズファンの怒号を背中に感じながら、埼玉西武・森友哉は肩をいからせ、バットを片手に西武第二球場横の室内練習場へと足を進めていた。
「バッティングのどこがしっくり来ない?」という筆者の質問にも、「全部です」と、素っ気ない態度の彼だったが、そんな姿を見た私はどこか懐かしく、頼もしくも感じていた。
――それは、今から8年前の2007年のことだった。
埼玉西武は26年ぶりのBクラス転落という得体のしれない重圧と戦っていた。このときいまの森と同じように、バット片手に肩をいからせ、試合後に室内練習場へ向かっていたのが、今はチームの主力になっている中村剛也であり、栗山巧だった。
この年の埼玉西武は、開幕からスカウト活動による不祥事が発覚してとても野球どころじゃなかった。そうしたノイズを振り払うかのように、中村も栗山も試合後、ひたすらバットを振っていた。
翌2008年には中村が46本塁打を放って自身初の本塁打王を獲得、栗山も初の規定打席到達で打率3割1分7厘をマークし、チームも日本一に輝いた。'07年の屈辱的敗戦をバネに変えて反発した結果だった。
そんな彼ら2人の8年前の姿と、現在の森の姿はどこか被って見える。
懐かしくも頼もしく感じた理由は、それだ。
連敗中、先輩のひと言で蘇った高橋朋己。
連敗のひとつの要因となっていたストッパー高橋朋己の不振についても、先発から彼の代役でストッパーへと配置転換になった牧田が辛口のエールを送る。
「今まで高橋朋己がずっとストッパーをやってきたわけですけど、こうして自分が高橋の場所を取ったことを、(彼は)もっと悔しいと思わないといけない……。悔しいから逆に取り返してやるという気持ちになってくれれば、逆に切磋琢磨していける」
高橋は今年プロ3年目。牧田のこの言葉に奮起したのかは分からないが、高橋はそれまでの5試合連続失点が嘘のように、3試合連続無失点に抑える変貌ぶりで、かつての勢いを取り戻しつつある。この経験もきっと無駄ではなかったのだろう。