サムライブルーの原材料BACK NUMBER
最も苦しかったシーズンを終えて。
細貝萌の社会貢献とサッカーの関係。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAsami Enomoto
posted2015/07/07 11:00
ブンデスリーガ最終節で途中出場を果たし、来季への足掛かりを掴んだ細貝萌。昨年10月以来の日本代表への復帰も視野に、雪辱のシーズンにするべく準備をしている。
大病でサッカーを止めざるをえなかった3歳上の兄。
また、慢性血栓塞栓症性肺高血圧症(シーテフ)のイベントは、一昨年から継続して参加しており、この6月で5度目の参加となった。血栓によって肺と心臓の血液の流れが悪くなってしまうシーテフはあまり聞きなれない病気だが、細貝の熱心な活動によって認知度は上がっている。
活動のきっかけはレバークーゼン時代、チームのメインスポンサーがバイエル薬品だったこともあって接点が生まれた。
人々を苦しめる病気に対して、何かサッカー選手としてやれることはないのか。
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以前からそんな思いを強くしていたのには、理由がある。3歳年上になる双子の兄の一人が小学生のころに大病を患ったことで、大好きなサッカーを止めざるを得なかった。細貝少年も大きなショックを受けたことは言うまでもない。
「僕がサッカーを始めたのも、双子の兄がきっかけでした。年が3つ離れているから当然、サッカーのレベルも違う。とにかく追いつきたくて、近づきたくて、そんな感じでしたね。でも兄の一人が腎臓移植を必要とする大きな病気をしてしまって……。
今は治って元気に生活していますけど、当時は両親も兄も大変だったと思うし、僕も感じた部分がいろいろとありました。だからプロのサッカー選手になってから、病気のことで何か自分にもできることってないのかなというのはずっと(心に)ありました」
「サッカー選手であることで、影響力みたいなものがある」
シーテフがどんな病気かを学び、もし自分の力で少しでも多くの人に知ってもらえれば、という思いで活動を続けてきた。
「シーテフはなかなか一般的には馴染みのないというか、ほとんどの方が耳にしたことのない病気です。お医者さんの中でもあまり馴染みのない病気なので、病院を転々としてからシーテフですって言われることもあるみたいなんです。だからこそ多くの方にこの病気のことを知ってもらいたい。
2年間啓発のための活動をしてきたことで、最初のころと比べると多少は知ってもらっているのかなと思います。僕がサッカー選手じゃなかったら、こういう活動をやっても知ってもらうまでに時間が掛かるかもしれない。でもサッカー選手であることで、少なからず影響力みたいなものがあると思うし、僕もこういう活動があるから頑張れているなって思うこともある。
(啓発大使の活動は)今回でひと区切りになるんですけど、個人的には何かしらの形で今後ともサポートしていければいいかなって思っています」