サムライブルーの原材料BACK NUMBER
最も苦しかったシーズンを終えて。
細貝萌の社会貢献とサッカーの関係。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAsami Enomoto
posted2015/07/07 11:00
ブンデスリーガ最終節で途中出場を果たし、来季への足掛かりを掴んだ細貝萌。昨年10月以来の日本代表への復帰も視野に、雪辱のシーズンにするべく準備をしている。
カープの黒田博樹の著書を読みふける。
入院中、ニューヨーク・ヤンキースから広島カープに復帰した黒田博樹の著書を読みふけり、気持ちにもう一度スイッチを押し直している。
早くこんなシーズン終わってほしいと願ったこともあった。ストレスがマックスに達したときは、物に当たりそうになったこともあった。だが、グッとこらえた。グッとこらえて気持ちを切らさなかったからこそ、シーズンを終えてからは別の感情がこみ上げてくるようになった。
「苦しいシーズンだったなと思います。でもサッカー選手として、人として、一番成長できたシーズンだったんじゃないかなって今では思っています。別に強がっているわけでも何でもなくて。今季はこんなに詰まるかっていうぐらいいろいろと詰まったシーズンだったんで、もう逆に何が起こっても怖くない。どんなことでも乗り越えていけるんじゃないかなって思います」
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シーズンが終わって、監督、GMの話を聞く場があったという。
「評価しているから外に出す気もない。1回リフレッシュして新たな気持ちで戻ってきてほしい」
その言葉を嬉しく受け止めた。
「日本代表でプレーしたい気持ちは当然ある」
社会への貢献、地元への貢献。
オフの出来事が彼をリフレッシュさせ、使命感が彼にモチベーションを与えている。妻・明花さんと4年越しの結婚式を日本で挙げることができたことも、彼に力を与えている。
日本代表復帰への思いも強い。
「チームで結果を残していれば自然と呼んでもらえると思う。それは最後スタメンで出ていた(原口)元気が証明してくれてもいるし。まずはチームで活躍することがベースだし、日本代表でプレーしたいという気持ちは当然あるので」
溜めてきたエネルギーを、爆発させるための次のシーズン。
慣れ親しむ伊勢崎の景色を、彼はしばしの間、眺めていた。
どんなことも乗り越えていける――。