ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
海外ゴルファーから見た日本ツアー。
稼ぎ場所、プロアマ戦、日本語。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2015/07/02 10:40
独特のファッションスタイルで、どこにいても目立つイアン・ポールター。物言いも率直で時に論争を巻き起こすが、ゴルフについては真摯な姿勢を見せる。
松山のように海外でプレーすれば、自然とタフになる。
コース内外で、その目に奇異にも映る習慣を受け入れ、日常生活の壁を乗り越えるたびに彼らはタフになる。2015年の男子ツアー、8試合を消化して5勝を挙げている外国勢はみな、来日してからの期間が長い選手たちだ。
6月末に山梨県で行われたISPSハンダグローバルカップは、全米オープン翌週にもかかわらず世界のトッププロが招待出場した。南アフリカ出身のシャール・シュワーツェル。2011年のマスターズチャンピオンは、4年ぶりの来日試合でこう言った。
「松山英樹のように海外に出て行ってプレーしている選手は、自然とタフになると思う。日本は環境も素晴らしい。ただ、毎週同じ(日本人)選手たちと一緒に戦って、知っているコースで戦っている選手と(海外でプレーする選手は)違いが出る」
シュワーツェルも母国ツアーから欧州、米国ツアーへとステップアップしたが、その道も決して容易くなかったという。
「プレー自体に問題はなかった。特にヨーロッパは、生活も快適だった。ただPGAツアーは世界で最強のレベルで、本当に多くの人が関わっている。言葉や食事、芝の違い? いいや、そういうことよりも……何よりもアメリカの“スケールの大きさ”に戸惑った。そこに慣れるのに、メンタルを強くするのに、時間がかかった」
異国では、コース外でも自然淘汰がある。
イアン・ポールターもこの大会のために来日したスター選手のひとりだった。2位で決勝ラウンドに進んだ2日目のこと。調子が思わしくなくインタビューを早々に切り上げて練習場へ向かった。雨に打たれ、たったひとりでドライバーショットを繰り返した。
日本人選手たちの間でも、この会場のドライビングレンジはあまり評判が良くなかった。打撃スペースが手狭なうえに、70ヤード近い打ち下ろしを強いられ、選手たちは距離感をつかみづらいのだ。だが普段から舌鋒鋭いポールターは、練習を惜しまなかった。
「日本の練習場が狭いのは理解しているつもり。あの時はただ自分のスイングを直すのが目的だった。ボールがどこまで飛ぶか、といったことではなくてね。気持ちの問題だ」
100点満点が付く設備でなくとも、いまやるべきことは、できるだけの環境と彼は判断したのである。
不慣れな土地での困難に対応することは、ひとつひとつが経験値。異国で転戦を続ける選手の間では、コース外の生活においても自然淘汰がある。外国人選手や、海を渡る日本人選手が醸し出すハングリーさは、それに打ち勝ってきたところにあるように思える。
いま与えられた場所で、力の限り振る舞うか。あるいは甘えを排するために、戦いの場を自ら変えるか。
それぞれの環境を管理するプロセスは、いずれアドバンテージにも、その逆にもなり得るのだろう。
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